スイスには無数のゴンドラやリフト、登山鉄道が存在する。これらが全て稼働すれば、毎時100万人近くの人々がアルプスの峰へ登れる計算になる。
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では1日当たりだと?考えると想像を絶する人数になる。実際、スイスアルプスの山々は大きなビジネスの場となっている。
地中海のニースからアドリア海のトリエステにかけて弧を描くアルプスには、全体で約1万個の交通機関がある。うち約4分の1はスイスに存在する。人気のある山は、頂上の展望台が観光客や登山客で大混雑する。
長年の国外生活を経て母国スイスへと戻ってきた写真家のハンス・ペーター・ヨスト氏は、人間が山に与える負担の大きさを目の当たりにし、衝撃を受けた。。人で溢れる場所や都市へと出向き、その光景を写真に収め、写真集「Alpen-Blicke.ch外部リンク(仮訳:アルプスの眺め.ch)」に盛り込んだ。人混みがアルプスにもたらす悪影響に警鐘を鳴らした。
批判するのはヨスト氏や他の寄稿者だけではない。
「観光業は都市化の主な推進力だ。大規模な観光リゾートでは、土地の利用率が非観光地域に比べ大幅に高い」――世界自然保護基金(WWF)はこう指摘する。
だが生態系へのダメージを減らすには、経済コストが高くなる可能性がある。山岳鉄道の業界団体によると、スイスの山岳地帯の収益の5分の1は直接・間接的に観光業から生み出されている。
2020年前半には新型コロナウイルス感染症の流行で国内がロックダウン(都市封鎖)され、外国人観光客もぴたりといなくなったため、観光業界は一部パニックとなった。
山岳観光にとって外国人観光客がどれだけ重要か。それはヨスト氏の本の中で、例えば雪の中でテニスシューズの靴底を探すアジア人観光客の写真に表れている。
20年夏の観光客数はまだ発表されていないが、国外旅行を断念せざるを得ず、代わりに国内を旅行するスイス人が多かったとみられている。
何年かぶりにスイス人が再発見したアルプスは、もはや彼らの知っているアルプスではなくなっていたのかもしれない。
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