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米国はアルカイダの報復テロに警戒を

世界貿易センターの跡地やホワイトハウスの周りに集い、オサマ・ビンラディン容疑者の死を祝うアメリカ人 Keystone

アメリカに所在する施設やアメリカ国民は、オサマ・ビンラディン殺害後に起きるであろう報復攻撃に備えるべきだと、安全保障の専門家がスイスインフォに対して語った。

チューリヒ大学政治学科で戦略研究の教授を務めるアルベルト・シュタヘル氏はさらに、米国とパキスタンは秘密裏に、米国のアフガニスタンからの撤退を条件にビンラディン容疑者捕獲に合意していたと見ている。

 2001年に起きた9.11米同時多発テロの首謀者で謎の多い人物とされていたビンラディン容疑者は、潜伏先のパキスタンで、米特殊部隊との銃撃戦の末に死亡したと、バラク・オバマ米大統領は5月1日に声明を出した。

 パキスタンの首都イスラマバードから北に約60キロメートルに位置する町、アボタバードにあるビンラディン容疑者の隠れ家で戦闘が行われ、ビンラディン容疑者のほかにも成人男性3人が戦闘で死亡した。そのうち1人はビンラディン容疑者の息子であるという。AP通信によると、米政府高官は、ビンラディン容疑者の遺体は既に海に水葬されたと話したという。

 世界中で指名手配されていたビンラディン容疑者の死は、同氏が率いる武装テロ組織「アルカイダ」によるテロ攻撃からあと数カ月で10周年を迎えるところで発表された。このテロ攻撃では世界貿易センターと米国防省ペンタゴンが襲撃され、およそ3000人もの尊い命が奪われた。米国はその後1カ月もたたないうちにアフガニスタンに侵攻し、アルカイダを追跡。続いてイラクに侵略した。

swissinfo.ch : ビンラディン容疑者の死により、アルカイダの統率力およびアルカイダ系組織全体に何か影響がありますか。

シュタヘル : 後年のビンラディン容疑者は象徴的人物に過ぎず、アルカイダのテロ行為そのものには関わっていなかった。

今回の事件で、ビンラディン容疑者は殉教者となり、神聖な人物として高められた。ビンラディン容疑者の死はアルカイダ構成員にとってある種の合図となり、今後の行動を後押しするものとなるだろう。

swissinfo.ch : つまり世界中で報復テロが発生するということですか。

シュタヘル : その通りだ。特に、米国にある施設や米国民に攻撃が及ぶだろう。アルカイダにはここのところ目立った動きはなかったが、再びテロ攻撃が開始されると見ていいだろう。

今、アルカイダ系組織には起爆剤がある。イエメンでは、アルカイダは常に重要な位置を占めていたし、北アフリカ諸国でも同様だ。

swissinfo.ch : ビンラディン容疑者の死は、米国にとってどのような意義がありますか。

シュタヘル : 「9・11米同時多発テロ」以降のテロとの戦いは終わり、米国が勝利を収めた。米国がアフガニスタンで現在行っている作戦もまもなく終わりになる。オバマ米大統領は「われわれはアルカイダに打ち勝った。これでアフガニスタンから撤退できる」と胸を張って言えるだろう。

パキスタン政府と米国政府の間に取引があったのではないか、とわたしは思っている。パキスタンの協力なしにあのような掃討作戦を遂行するのは到底無理だっただろう。

swissinfo.ch : 過去にパキスタンはビンラディン容疑者に対してあいまいな態度を取っていると批判を受けたことがあります。なぜパキスタンは長い間、身柄確保に動こうとしなかったのですか。

シュタヘル : パキスタン国民がビンラディン容疑者をかくまっていたからだ。ビンラディン容疑者は交渉の切り札だった。「ビンラディン容疑者の身柄を握っていれば、米国人に圧力をかけることができるし、状況を有利に運ぶことができるのでは」とパキスタンは目論んでいたかもしれない。

 ビンラディン容疑者を切り札にすることでパキスタンは、「われわれはビンラディンのことは忘れる。だから彼を捕まえてもいい。でもその代りにしてもらわないといけないことがある」と交渉したのではないか。パキスタンの狙いは、米国がアフガニスタンから撤退することだ。つまり、アフガニスタンからの引き揚げが予定されている2014年が交渉のカギを握ったのだと思う

バラク・オバマ米大統領は今回の掃討作戦を「アルカイダ討伐に対するわが国の努力を記念すべき最も重要な成果だ」とし、また「ビンラディン容疑者の死をもってわれわれの努力が終わるわけではない。アルカイダが今後も攻撃をしかけてくるのは明白である」と語った。

ニューヨーク市長のジョージ・ブルームバーグ氏は、今回の知らせで「2001年9月11日に愛する人を亡くしたすべての人が、少しでも悲しみを和らげ、慰められるように」と語った。

ジョージ・ブッシュ前米大統領は、ビンラディン容疑者殺害を「重大な功績」とし、「米国の勝利」を示すものと評した。

アフガニスタンのハーミド・カルザイ大統領は、ビンラディン容疑者は「自らの行いに報いを受けた」と話した。

パキスタン政府は、ビンラディン容疑者の死は「テロと戦い、テロを撲滅しようという、パキスタンを含めた国際社会の固い決意を表している」と述べた。

パレスチナのイスラム組織「ハマス」は殺害を批判。ビンラディン容疑者を「アラブの神聖な勇士」と見なし、彼の死を悼んだ。

( 英語からの翻訳、鹿島田芙美 )

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