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2024年6月9日スイス国民投票 2件の医療費抑止策は否決

医療現場
2024年6月9日スイス国民投票は医療費がテーマだ Keystone / Ennio Leanza


スイス有権者は9日の国民投票で、増え続ける医療費を抑制する2件のイニシアチブ(国民発議)を反対多数で否決した。再生可能エネルギー発電を促進する電力法は可決、ワクチン接種の義務化禁止案は否決された。

9日の国民投票で問われた案件は計4件。結果が最も注目されたのは、医療費の抑制を目指す2件のイニシアチブだった。左派・社会民主党 (SP/PS) と中道・中央党(Mitte)が異なる提案を出していた。

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保険料を収入の10%上限に

社会民主党のイニシアチブは、基礎医療保険料を世帯収入の10%に制限する案だ。これを超えた全ての人に補助金を給付し減免する。

スイス国民は全員、基礎医療保険への加入が義務付けられており、自分で選んだ保険会社に月々の保険料を支払う。月額の保険料は会社や州によって異なり、低額所得者には居住している州から補助金外部リンクが支払われる。

被保険者は月々の保険料のほかに、病院にかかった際は年間最低300フラン(約5万2千円)の医療費を自己負担する。この免責額は2500フランを上限とし、免責額が高いほど保険料の月額は低く設定される。

免責額に達した後も、被保険者は治療代や薬代の1割(薬によっては2割、年間最高700フラン)を自己負担しなければならない。

財源の少なくとも3分の2は連邦政府が、残りは州が負担する。保険料の支払いが困難な世帯向けの減免制度は既に存在するが、受給資格は州の裁量に委ねられ地域差がある。社会民主党はそこに目を付け、自党の案なら全員が平等に恩恵を受けられると主張していた。

反対派は、この提案は医療費の高騰という問題の根本的な解決策になっていないと主張。補助金を増やすことよりも医療費の上昇を抑えるのが先だと訴えていた。

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連邦政府と連邦議会は、年間35億~50億フラン(約6000億~8500億円)の追加負担が生じるとして提案に反対。政府はこれを賄うために他分野での増税、歳出削減が必要になると訴えていた。

この提案は左派以外の支持を得られず、投票日が近づくにつれ着実に有権者の支持を失った。

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担当: Katy Romy

6月9日の国民投票:医療費の上昇を抑えるには?

保険料上昇のスパイラルを止めるにはどういった措置が効果的だと思いますか?

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コスト・ブレーキ案も否決

中央党の提案は、基礎医療保険の給付額の増え方に対して経済・賃金上昇に連動した「コスト・ブレーキ制度」を導入するという内容だ。具体的には、1人当たり保険給付額の年間伸び率が賃金上昇率を2割上回った場合、政府は州、基礎医療保険会社、医療提供者などと協力して是正措置を講じなければならない。

だが提案では、公的部門が具体的にどんな措置を講じるべきかには触れておらず、反対派は提案を「張りぼて」と批判していた。

賛成派は、ブレーキ導入はこれまで言われてきた医療費削減策が実行に移される契機になると主張。主なものは日帰り手術の奨励、ジェネリック医薬品の優先、電子カルテ使用などだ。

連邦統計局によると、スイスの医療費は1人当たり月額869フラン(約15万円、2022年)だ。

2022年の医療費の対国内総生産(GDP)比は11.7%。医療費の約60%を家計、30%を公的資金、7%を企業が賄う。

すべての人に加入が義務付けられた基礎医療保険料は過去20年間で倍増している。

スイスの最低所得層では保険料の支払いが家計の18%を占めることもある。保険料の支払いが困難な人は人口の4分の1に上り、当局は補助金という形で保険料を減免している。

電力法は可決

電力法は再生可能エネルギーによる電力生産を促進し、電力供給の安定化を図るためのさまざまな措置を盛り込んだ包括的な立法パッケージで、長い時間をかけて議論され、最近議会で可決された。

この法律は特に大規模な水力発電所、太陽光発電所、風力発電所の建設を促進するための措置を盛り込んだ。

この法律に反発したのが国内の景観保護団体だ。フランツ・ヴェーバー財団と2つの小規模環境保護団体が、景観破壊につながるとして、法律の施行に反対するレファレンダム(国民表決)を起こした。ただ主要環境NGOの支持は得られていない。

国民党(SVP/UDC)も、この法律では国の電力需要を満たせないとして施行に反対している。

世論調査では賛成派が依然大きくリードしていた。

パンデミックの政治的遺物

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは過ぎ去ったが、その遺物が国民投票にかけられた。市民団体「スイス自由運動」が提出した「自由と身体的完全性のために」というイニシアチブだ。

これは、ワクチン接種などには本人の同意を義務付け、それを拒否した場合でも罰則や社会的・職業的不利益を被ったりしないことを憲法に明記するという内容だ。しかしスイスではそもそも、いかなる人も本人の意思に反してワクチン接種を強制されることはない。

このイニシアチブを支持していたのは国民党会派だけだった。スイス公共放送協会(SRG SSR)の最新の世論調査では、賛成すると答えたのは22%にとどまった。

投票率は45.4%だった。

編集:Samuel Jaberg、仏語からの翻訳:宇田薫、校正:ムートゥ朋子追記:宇田薫

2024年6月8日に配信されたこの記事は、翌9日のスイス国民投票結果を受け、最新情報に更新しました。

>>2024年6月9日国民投票の特集ページはこちら:

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