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円安、三国協力、クルド人…スイスのメディアが報じた日本のニュース

川口駅の上空写真
埼玉県川口市や隣の蕨市は日本で最も多くのクルド人が住むとされる Kyodo News via AP

スイスの主要報道機関が先週(6月24日〜30日)伝えた日本関連のニュースから、①輸出に有利でも懸念される円安②日米韓の対中三国協力③日本の排他的な顔、の3件を要約して紹介します。

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輸出に有利でも懸念される円安

外国為替市場で円の対ドル相場の下落が止まらず、6月28日には一時1ドル=161円台と約37年半ぶりの円安水準を更新しました。フランス語圏の日刊紙ル・タンは、この円安は日銀にとって「需要主導のインフレを起こしたいという願望と、家計の負担となっている円安を食い止めるために利上げするかという葛藤をもたらす頭痛の種だ」とする解説記事を掲載しました。

円安は外国人観光客や輸出産業に恩恵をもたらす一方で、原材料・エネルギー・製造品輸入を押し上げ家計消費の重荷となっています。ル・タンはその帰結として「日本は世界第3位の経済大国の座を失った」と説明しました。

記事は「日銀の最大の関心事は、インフレ率を2%に安定させることだ」と明言。エネルギーコストを除いた物価は下落が続くうえ、円安による個人消費の低迷が日銀の目指す需要主導のインフレを妨げている、と分析。スイスの資産運用大手ピクテ・ウェルスマネジメントの為替専門家ミヒャエル・ハルト氏は「7月末の利上げが予想されるが、日米金利差はまだまだ大きく、大きな変化はないだろう」とコメント。政策を誤り景気回復が水の泡になった過去の経験から「日銀は慎重になっている」と解説しました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

日米韓の対中三国協力

日本と米国、韓国が26日、ワシントンで初の商務・産業相会合を開き、半導体や蓄電池など重要分野で「強じんで信頼性のあるサプライチェーンに関する原則を推進する」と盛り込んだ共同声明をまとめました。ドイツ語圏の日刊紙NZZのマルティン・ケリング東京特派員は、3カ国協力は「電池と半導体の供給網で最も重要な2カ国と米国がこれまで結んだ二国間協定に、より大きな影響を与えることになる」と伝えました。

共同声明は中国を名指しこそしなかったものの、「中国の代名詞として西側諸国で定着した言い回し」を使っていると解説しました。それは3カ国が協力を通じて「インド太平洋」諸国の安全と繁栄の向上を目指すこと、「戦略物資を特定の供給源に依存することを武器として利用する」国々への懸念を示すことです。

記事は韓国カトリック大学のヤン・ジュンソク経済学部教授のコメントを引用し、日韓は米国の「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」における政策決定に関与を強められることを期待していると分析します。日本製鉄による米USスチールの買収が米国内の政治的抵抗に直面していることを例に、ヤン氏は「3カ国全てが定期的かつハイレベルでコミュニケーションをとれる」チャネルを確立することが重要だと説きました。

3カ国協力が本領を発揮するのは11月の米大統領選挙になる、との見方も示しました。「ドナルド・トランプ氏が大統領として復活する可能性がある間、この新しい仕組みが存続するかどうかは完全に不透明だ」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

日本の排他的な顔

人手不足で移民の重要性が指摘されるなか、在日クルド人に対する反発が高まっているのはなぜか――ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、「日本のクルド人コミュニティーの中心地」とされる埼玉県川口市のルポ記事を掲載しました。

埼玉県川口市と蕨市には合わせて約3千人のクルド人が住んでいます。同紙が取材したテヴフィク・タスさんは20年前、13歳の時から川口に住み、解体業者やケバブ店、カフェ、バー、フードトラックを経営。外国人としての生活に問題はないと感じていましたが、最近「第二の祖国に対して疑問を抱き始めた」と話します。きっかけは昨年7月、川口市の病院前に100人近くの外国人が集結する騒動外部リンクでした。それ以降、タスさんはネット上の誹謗中傷や日常生活での敵対行為に悩まされているそうです。

記事は江戸時代の鎖国政策を始め、日本人の外国人との付き合いの歴史にも注目。開国後、「寡頭政治家たちは国内勢力をナショナリズムやアイデンティティ形成文化と結びつけた」とし、敗戦後には保守派があらゆる左翼勢力に対して「均質な存在としての日本の自己イメージを擁護」したと解説しました。

「この島国は今日に至るまで、学習したルールと規範に基づいて、静かに作動する調和機械のように機能している」。難しい言語やマナーを習得した外国人は称賛される一方、「多様性を棚上げ」する集団意識が深く根付いているため、外国人労働者や難民受け入れに消極的だと伝えています。「だからこそ、他国であれば警察が扱い慣れていそうな出来事が、日本では大きなもめごとに発展することがよくある」

反発が起きるのは1つの出来事のせいだけではありません。誤ったごみの出し方、児童労働、死亡事故、店前での飲酒、女性への嫌がらせなど「平和の妨害」が起きているといいます。タスさんの「民族主義のエルドアン政権が日本のジャーナリストに影響を与えている」との見方も紹介しました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

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校閲:大野瑠衣子

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