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被団協、東京メトロ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

日本被団協の田中熙巳代表委員
ノーベル平和賞の授賞から一夜明けた12日、記者会見に臨み櫛を当てる田中熙巳代表委員(92) EPA/FRANCK ROBICHON

スイスの主要報道機関が先週(10月7日〜13日)伝えた日本関連のニュースから、①日本被団協にノーベル平和賞②東京メトロが上場へ、の2件を要約して紹介します。

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日本被団協にノーベル平和賞

ノルウェーのノーベル賞委員会が11日、2024年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表しました。スイス各紙はさまざまにその意義を評価しました。

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は解説記事で、ノーベル賞委員会のヨルゲン・ヴァトネ・フリドネス委員長がスピーチで繰り返したキーワード「核のタブー」に注目。スイス・ジュネーブに本部を置く赤十字国際委員会(ICRC)は核兵器の使用はいかなる場合でも違法であると定めていますが、「私たちは現在、核兵器が徐々に脱タブー化するのを目の当たりにしている」。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が欧米各国にウクライナ支援を思いとどまらせるために核兵器の使用をちらつかせているのがその大きな象徴です。SRFは「ノーベル賞委員会は核兵器の脱タブー化を止めることはできない。今年のノーベル平和賞を通じて、脱タブー化を少なくとも公然と非難しようとしている」とまとめました。

ドイツ語圏の大手紙NZZはロシアだけでなく北朝鮮をはじめアジアでも核の脅威が高まっていると指摘。北朝鮮の脅威を受けて韓国でも核武装について公然と議論されおり、実現すれば「日本は次の核保有国候補とみなされることになる」と伝えました。しかし日本は核軍縮を進める立場を崩さず、被団協は「日本の立場を伝える重要な大使だ」と位置付けました。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、被団協の受賞は「個々の政治家が人類最恐の兵器に対してあまりにも無思慮なこの時代において、強力なサインとなる」と評しました。「被団協の最も重要なツールは言葉であり、日本史上最悪の時代とその結果についての伝承だ」。代表委員の田中煕巳さんは92歳という高齢ながら、若者に原爆の惨状を伝えるため横浜からケープタウンまでのピースボートへの乗船依頼を快諾したというエピソードも紹介しました。

同紙は他のヒバクシャも高齢化していることに言及し、ノーベル平和賞の授与は「少し遅すぎる。しかし何もしないよりはマシだ」と指摘しました。佐藤栄作元首相が非核三原則で同賞を受賞してから50年が経過した今、「ノーベル賞委員会にとって少し緊急性が高まっている」とも強調しました。

フランス語圏の大手紙ル・タンは、絶望的な戦争が世界各地で起こる2024年はノーベル平和賞を「該当者なし」にすることも可能だったと指摘しました。そして同賞をもってしても「広島・長崎の日本人生存者が十分に尊重されることは決してない」とし、「彼らの苦しみ、証言の力強さ、あらゆる大量破壊兵器を放棄するための戦いは、絶対的な尊敬に値する」と強調しました。

それでも平和賞が贈呈された背景として同紙は中東紛争を挙げました。受賞候補者としてパレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、司法裁判所(ICJ)、アントニオ・グテーレス事務総長の名が挙がっていましたが、イスラエル当局はこの3人を「反ユダヤ主義者」と糾弾しています。この3人に授賞すれば、こうした非難合戦にノーベル賞委員会も参加することになるとして、「現在は誰も(ガザ紛争に)介入する権限を持っていない。それが今年の平和賞の教訓だ」と指摘しました。

イタリア語圏の地域紙ティチーノ・オンラインは、箕牧智之代表委員がガザ地区の状況が80年前の日本と重なると発言したことについて、ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使が「不適切かつ根拠に欠けている」とSNSで抗議したことを報じました。同大使が今年の長崎市での平和式典に招待されず、米英の大使も不参加を決めたことも併せて伝えました。(出典:SRF外部リンクNZZ外部リンクターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語、ル・タン外部リンク/フランス語、ティチーノ・オンライン外部リンク/イタリア語)

東京メトロが株式上場へ

今月23日、東京地下鉄(東京メトロ)が東京証券取引所のプライム市場に上場します。7日に発表された1株当たり1100~1200円という仮条件をもとにすると、時価総額約6400億~6900億円の大型上場。NZZは「全ての人が勝者になることを示す兆候が数多くある」と紹介しています。

【その1】「東京メトロは公共部門の至宝の1つ」。同社の昨年の売上高は3900億円、営業利益は760億円で、これは利益率19.5%に相当。「それだけでも新規株式公開(IPO)を成功させるための十分な基盤となる」

【その2】日本の鉄道民営化の長い歴史。1987年の国鉄民営化以来、JR各社は利益を上げるだけでなく定時運行を守り、東京・名古屋・大阪を結ぶリニア建設など大規模投資に着手。

【その3】「東京圏」は人口3800万人を抱える世界最大都市で、通勤・通学者のほとんどは私鉄を利用している。ただし東京メトロもJR東日本などとの競争に対抗できるかどうかを証明する必要がある。そのため「新しいライフスタイルを促進するための新ルート建設、周遊機会の創出、不動産プロジェクトに取り組んでいる」

【その4】従業員にもメリット。株式の2%は同社従業員のために確保されている。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイスでチーズ品評会 最優秀賞決まる」(記事/日本語)でした。他に「世界大学ランキング 連邦工科大学チューリヒ校は欧州1位」(記事/日本語)、「スイス上空でオーロラ観測」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は10月21日(月)に掲載予定です。

校閲:大野瑠衣子

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