スイスの視点を10言語で

「企業は在宅勤務社員の家賃補助を」裁判所が判断

在宅勤務
新型コロナウイルス危機で、多くの企業が従業員に自宅勤務を命じた © Keystone / Christian Beutler

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、スイス連邦裁判所(最高裁)が、従業員に在宅勤務の必要性が生じた場合、雇用主は家賃の一部を補助しなければならないとする決定を出したと報じた。

訴訟は2016年時点のもので、判決外部リンクは今年4月23日に出された。個人情報は伏せられているが、同紙外部リンクによると、訴訟は在宅勤務をしていたある会計事務所の従業員のケースだ。

事務所側は、在宅勤務について従業員と事前の合意はなく、家賃補助の義務は生じないと主張したが、連邦裁は事務所側の訴えを退けた。さらに従業員には退社後も、時間をさかのぼって家賃補助を請求できるとも述べた。

判決によると、従業員が在宅勤務のために追加で部屋を借りたり、より広いアパートを借りたりしたかどうかは関係ないとした。また家賃補助は月額150フラン(約1万7千円)が相当とした。

スイスの連邦裁判所が、在宅勤務中の従業員の家賃補助に対して判断を示したのはこれが初めて。ザンクト・ガレン大学のトーマス・ガイザー教授(労働法)は同紙に対し「雇用主は、業務遂行で発生したすべての費用を従業員に払い戻すことが法律で義務付けられている」として、判決内容は当然だと語った。

ガイザー氏は、判決は雇用主から在宅勤務要請を受けた従業員にいずれも適用されると指摘する。ただ従業員側の希望で自宅勤務をしている場合は、必ずしもこの限りではないという。

労働組合の幹部らは、契約上は在宅勤務が義務付けられてはいないものの、さまざまな理由により半ば強制的に自宅勤務をしている労働者が、このケースからは除外されてしまうと懸念する。スイス労働組合連合外部リンク(SGB/USS)のルカ・チリグリアーノ書記長は、企業はオフィスの家賃を節約するため、勤務場所に柔軟性をもたせていることが多いと述べた。

チリグリアーノ氏は同紙に対し、こうした手法で雇用主が従業員へコスト転嫁することは非常に不公平で、違法だと語った。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、多くの企業は従業員に在宅勤務を命じた。判決がそうした状況のさなかに出されため、スイス国内では大きな注目を集めている。一部の雇用主は、現行の自宅勤務体制を延長、あるいは一部の従業員に在宅勤務を主力としていくかを検討している。

外部リンクへ移動
サブスクリプションを登録できませんでした。 再試行する。
仮登録をしました。 次に、メールアドレスの認証手続きを行ってください。 ご入力いただいたメールアドレスに自動配信メールを送信しました。自動配信メールに記載されているリンクをクリックして、ニュースレター配信手続きを完了させてください。
今週のトップ記事

各種テーマに関するswissinfo.chのベスト記事を受信箱に直接お届け。

毎週

SRG SSRのプライバシーポリシーでは、データ処理に関する追加情報を提供しています。 

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
署名の入った箱

おすすめの記事

国民投票に向けた署名がまたも偽造

このコンテンツが公開されたのは、 医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。

もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
エリック・ヘンニさん

おすすめの記事

スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

このコンテンツが公開されたのは、 1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。

もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部