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スイス総選挙 右派国民党が第一党に

左から国民党、社会民主党、急進民主党、キリスト教民主党、緑の党の伸び率。 swissinfo.ch

4年に一度行われるスイスの上下両院選挙が19日に行われ、右派・国民党は国民議会(下院)選挙では200議席のうち、55議席を獲得し、社会民主党の54議席を抜くスイス第一党に躍進した。

前回の1999年の選挙でも国民党は大幅に15席を増やしたが、今選挙ではさらに5%以上も伸びたことになり、8年間で4大政党の最下位から第一党の座にのしあがった。連立内閣に参加している同党は閣僚ポストを一つから二つに増やすように要求しており、40年間、スイス政治の安定を支えてきた構造に大きな変換をもたらすかもしれない。

国民党の大勝利

 スイス至上主義の国民党は移民・難民の受け入れ制限や欧州連合(EU)加盟反対、年金や社会保障の拡大反対などを主張。長引く景気低迷、改善しない失業率や治安問題など不安要因が大きいなか、保守的な政党が圧勝したのは驚きではない。国民党の勝因にはリベラル層が多いとされるフランス語圏で初めて支持を獲得したのが大きい。国民党の支持率が上がっていたもののここまでの勝利は予想されておらず、スイステレビでも「スイス政治の大変革」と報道された。しかし、全州議会(上院)では国民党の議席は7議席(社民党は6議席、キリスト教民主党12議席、社会民主党11議席)にとどまったため、国会の構成ではまだ中道右派が多く、そこまで大きな政治変動はないだろうとみる専門家も多い。

スイス政治の二極化

 前回の総選挙でも国民党と左派・社会民主党の台頭により政治の二極化が騒がれたが、左派・社会民主党の伸びで「二極化の現実化」と報道された。問題は右派の国民党と左派の社会民主党の相容れない主張でどのように政府内のコンセンサスを得られるかが危惧されている。なお、国民党は他党の緩い難民・移民政策がテロリスト流入や治安悪化につながっていると示唆したキャンペーンを展開したため、ジュネーブに本部を置く国連難民高等弁務官(UNHCR)から「犯罪増加やテロを難民と短絡的に結び付けており、欧州でも最悪」と批判を受けていた。

マジックフォーミュラの行方

 スイス政治の「超安定政権構造」と呼ばれてきたマジックフォーミュラは1959年以来、4与党で、7つの閣僚ポストを社会民主党2人、急進民主党2人、キリスト教民主党2人、国民党1人で分け合ってきた。しかし、1閣僚しかない国民党は今回の選挙結果から当然もう一つの閣僚ポストを要求している。スイスでは国会が内閣を選ぶシステムになっているが、この投票が行われるのは12月10日の予定。国民党は欧州ではオーストリアの極右・自由党の党首ヨルク・ハイダー氏と比較される億万長者の国民党議員、クリストフ・ブロッハー氏をもう一つの閣僚ポストに推薦しており、「閣僚ポストが得られなければ他の一人も内閣から引き上げる」と脅しをかけている。

スイスの報道

 20日、総選挙翌日のスイスの新聞報道の多くは、マジックフォーミュラの終焉という点で一致した。国民党が第一党となったいま、閣僚ポストをもう一つ増やさなければならないという点では納得しているようだが、これまでも世論を騒がせてきたブロッハー議員になるかどうかはまだ分からない。


スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)

国民党は国民議会(下院)で11議席増やした。
社会民主党は1議席、緑の党は4議席の増加。
中道派の急進民主党とキリスト教民主党はそれぞれ7議席を失った。
19日、総選挙の投票率は42,5%。前回の1999年では43,3%だった。

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