スイス世帯の3軒に1軒は猫を飼っている。となれば、猫が暮らしやすくするために飼い主がどれだけ情熱を注いでいるかも想像がつく。ある写真家は、猫が家を出入りするための工夫に注目した。猫はしごだ。
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英国生まれ。1994年からスイス在住。1997年から2002年までチューリヒでグラフィックデザインを学ぶ。数年前に写真編集者に転身し、2017年3月からswissinfo.chのチームに参加。
Helen James(本文)、Brigitte Schuster(写真)
それら猫専用の通り道は、たいてい建物のファサード(正面部分)や排水管に取り付けられ、目のくらむような高さにも上れるようになっている。屋内外の出入りも自由だ。中にはここで紹介する写真集「Swiss Cat Ladders(仮訳:スイスの猫はしご)」に出てくるように、手の込んだはしごもある。はしご自体は他の欧州諸国にも存在するが、スイスの村や町ではとりわけ多く目にする。スイスで猫はペットとして人気なだけではなく、農家のネズミ・害獣対策として多く飼われているからだ。
猫にはウロウロする権利がある
スイス賃借人連盟で賃借法を担当するファビアン・グロールさんによると、間借り人は自分の部屋の窓やバルコニーにつながるはしごをかける前に、大家に許可を得る必要がある。建物が文化財に指定されていれば、家主だけではなく地域の文化財担当部署の許可も得なければならない。
飼い猫の安全のためにバルコニーにネットを張り巡らせるのは、法的には許可が要らないが、賃貸契約やハウスルールで禁止する大家は少なくない。ただやみくもに禁止するのはだめで、大家は歴史的な存在価値などそれらしい理由を説明しなければならない。
猫の事情
スイスには160万匹の猫が暮らす。
猫の推定寿命は15年。1世帯当たりの猫向け支出は年およそ2万フラン(約220万円)。これは事故や病気など急な診察費を除いた額だ。
医療費は猫にしては高くなりがちで、猫1匹当たり1000フランを超える。例えば歯感染症の治療には500~1000フラン、骨折には最高2700フランかかる。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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連邦政府は2016年3月、50万匹以上の犬を飼っている(スイスのような)国では犬のトレーニングコースはそれほどインパクトを持たないとの報告書を発表。コースの義務化後も犬が噛み付くなどの事件発生数は減少しなかったこと、トレーニングコースに参加した飼い主と、しなかった飼い主の行動にさほど違いが無かったこと、さらに飼い主のおよそ20%は、トレーニングコースに全く参加していなかったことなどが明らかになった。
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