オリンピックに危機管理の専門家を派遣
8月13日から29日まで開催される第28回夏季オリンピックでは、危機管理が大きなテーマとなっている。スイスでは軍関係者の中からセキュリティの専門家一人が派遣され、他国の専門家やギリシャの公安局と協力しテロの発生などに対応する。オリンピックへのスイス軍からの専門家の派遣は初めてである。
スイス選手団のヴェルナー・アウスブルガー団長がインタビューに応じ、メダルの可能性やセキュリティ管理などについて語った。
オリンピックの開催までおよそ2週間。アテネ大会ではテロに対する危機管理対策が大きな課題である。ギリシャ政府はおよそ18億フラン(約1,530億円)を使い、近代オリンピック史上最大の規模でセキュリティ対策を行っている。北太平洋条約機構(NATO)は海上と空から警備を行うことになっている。また、各国から危機管理の専門家が派遣され、生物・化学兵器の攻撃にも対応する。スイスからもセキュリティの専門家が派遣されることになった。
スイスインフォ アテネ・オリンピックにスイス兵が派遣されると聞いています。
ヴェルナー・アウスブルガー団長
スイス軍からはセキュリティの専門家が団員の一人として派遣されますが、軍服を着ているわけではありませんし、武装もしません。しかしながら、ギリシャ政府の公安局の情報にアクセスすることができ、万が一の場合、われわれのアドバイザーとなります。このような役割を担った人物を派遣するのはスイスでは初めてですが、われわれが知っている限りで言えば、ドイツは1972年から、デンマークはバルセロナ大会から派遣しています。
4年前のシドニー大会よりアテネは危険でしょうか。
専門家たちは米国同時多発テロが起こった2001年9月11日から、状況はすっかり変化したと見ています。アテネ大会ではありとあらゆることが起こる可能性があると予想され、オリンピックの開幕中は、世界で最もセキュリティが高い街になるでしょう。
準備は間に合うのでしょうか。
厳しい状況ですが、最低限のことは準備できると思います。スイスだったら、もっと精密で正確に遂行すると思いますが、そのレベルまでは到達しないかもしれません。工事が終わらない所も出てくるでしょうが、五輪スタジアムについては大丈夫でしょう。競技が16日間の間に詰め込まれ過ぎている感がありますが、プログラムは日程通りに行われなければなりません。
シドニー大会ではスイス選手が大活躍し、9個のメダルを取りました。アテネでも期待が高まりますが。
シドニーでの成績は素晴らしいものでしたが、アテネではそうはいかないと思います。メダルはせいぜい5個でしょうか。
テニスのロジャー・フェデラーの金メダル獲得が期待されますが、ほかにどの競技が有望でしょうか。
自転車競技でしょう。中でもトラック、タイムトライアル、マウンテンバイクで金メダルを取るかもしれません。また、ビーチバレーボールもいいですね。
陸上競技はどうですか。
現在のスイスの実力からすると、メダルは望めないと思います。800メートルで世界チャンピオンになった、アンドレ・ブーハーが開催までにベスト・コンディションに自分を持ってゆくことができれば、メダルの期待はありますが、難しいと思います。
米国選手の中でドーピングが見つかり、今回の大会でもドーピングは問題となっていますが。
スポーツをやっている限り、オリンピックでもまったくないということはないでしょうね。それが現実です。ドーピングのチェックについては、世界アンチドーピング機構(WADA)と国際オリンピック委員会(IOC)が協力し合うことを望みます。
聞き手 スイス国際放送 クリスティアン・ラーフラウブ(佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)
アテネ大会でのセキュリティ関連費用はおよそ18億フラン(約1,530億円)にのぼる。
米国からは400人のセキュリティ専門家が派遣される。
オリンピックには200ヶ国から1万6,000人の選手が参加する。
報道関係者は2万人。
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