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スイスの温泉&スパ 〜 温泉文化はここにもあり!

バーデン、温泉併設ホテルの屋内温泉 swissinfo.ch

新年、明けましておめでとうございます。昨年1月からご縁があり、スイスインフォブログライターの一員として仲間入りさせていただく事になり、早1年が経過しました。今年もみなさまにご興味を持っていただけるような、「もっと知りたい!スイス生活」を、自身の体験なども交えながら、お伝えして参りたいと思っております。本年もどうぞよろしくお願い致します。

 本格的なスキーシーズンが到来したスイス。筆者の住むチューリヒ州では昨年末から深い雪に覆われ、日中でも氷点下の気温の寒い年明けとなった。年末年始のスイスでは、体を休め、リフレッシュするためにスパ休暇を楽しむ人々も多い。我が家でも年に数回、スイス各地の温泉やスパホテルなどに出かけ、疲労回復を兼ねた旅行を試みる。

 山々に囲まれたスイスは豊かな水の国でもあり、豊富な水源と温泉源を有している。スイス各地で発見された源泉は、約250種類もあると言う。スイスは古くから、温泉の文化に馴染みの深い国なのだ。今回は、日本人にとっても関わりの深い、温泉とスパについて述べてみようと思う。

豊富な湯量に恵まれた湧き出る温泉 swissinfo.ch

 スイス各地に点在する温泉の中で、最も歴史のある温泉が、チューリヒから電車で15分程の郊外に位置する、アールガウ州のバーデン(Baden)である。スイス最古の温泉として知られるバーデンの地名は、ドイツ語で「温泉」を意味する。バーデンはローマ時代から栄える温泉地で、かつてはローマ兵たちの湯治場とされていたという歴史を持つ。湧き出る温泉はミネラル成分がスイスで一番高く、特に痛風やリューマチの治療に効果があるのだそうだ。温泉街のある旧市街の川沿いには、本格的な温泉療養施設、スパ施設を兼ね備えたホテル、少し離れて公共浴場の「テルマルバーデン(Thermalbaden)」などが並ぶ。テルマルバーデンは数年前から、建替えの大工事に入っており、今年2015年中か、来年までにはリニューアルオープンされる予定である。

川のせせらぎが聞こえる場所に、療養のための温泉治療院やホテルなどが並ぶ swissinfo.ch

 日本とスイスの温泉で大きく異なるところは、スイスの温泉では水着を着用して入浴をする事。場所によって異なるが、温泉の温度はぬるめで、バーデンでは約40℃前後に保たれている。夏は若干低め、冬は高めなのだそうだ。実際に入浴してみると、感覚としては日本の温水プールのような気もするのだが、長く浸かり過ぎていると、湯あたりしてしまうので注意が必要。一見プールに見える温水は、正真正銘の温泉水なのだ!

 温泉やスパでは、「Ruheraum(休憩所)」と記されたエリアをよく見かける。ここはいわゆるリラクゼーションルームで、温泉やスパのプールから上がった後、この場所でしばし火照った体を休めるのが目的。これもまさに、日本の温泉の休憩所を連想させるのだが、日本と異なる点は、スイスではこの場所で、静かにしていなければならないという事。「Ruhe bitte!(私語厳禁)」のサインを見逃してはならない。

「Ruheraum(休憩所)」の表示があるエリア(ドイツ語圏)は、温泉入浴後に静かに体のほてりを癒すリラクゼーションルーム swissinfo.ch

 温泉の中ではゆったりと泳いでいる人もいれば、おしゃべりをしながらのんびりと入浴する人、打たせ湯を楽しむ人や、寝湯でのんびりと寝そべっている人もいる。バーデンの公共浴場で温泉に入った時、ある一つの法則がある事に気がついた。温泉プールの浴槽の壁部分には、数メートルおきに穴が空いており、そこから勢いよく吹き出すお湯がジェットバスのような効果で、足腰の痛み、肩など、体全体をほぐしてくれる。これについてはどの温泉でもほぼ同様であるが、この温泉内では数分置きに大きなベルのような音が鳴り響く。最初はこの音の意味が理解できず、そのまま同じ体勢で湯に浸かっていると、隣にいた人から「移動して下さい」とのひと言。そこでようやく気づいたのだが、この施設では、体の様々な部分に代わる代わるうまくお湯が当たるように、移動しながら、体全体を治療できるようなしくみになっている。数分ごとの大きな音はその合図で、温泉の中でまるで壁に沿って輪を作ったような体勢の人々は、その音が鳴る度に決まった方向に移動し、首、肩や腰、足など、体全身をくまなくほぐしていた。あくまでもこれはバーデンの公共浴場でのケースで、スイスの温泉にすべてこの法則があるとは思えないのだが、日本の湯治と同様に、スイスの温泉が体の治癒や療養目的にも使用されている事が実感できた。温泉街を歩いていると、水飲み場のような場所に出くわした。これは温泉水を飲むための場所で、使い捨てのコップも設けられている。筆者も訪れる度に何度かトライしてみたのだが、「良薬は口に苦し」ということわざが思い出される味わいであった。

温泉街に設置された、飲む温泉 swissinfo.ch

 所変わりフランス語圏、ゲンミ峠の麓にある標高が1411mのロイカーバート(Leukerbad)は、こちらもローマ時代に源泉が発見されたスイスで伝統のある温泉地だ。周囲をそり立つ岩山に囲まれたロイカーバートの温泉では、複数の源泉から湧き出る高温51℃の湯、390万リットルを、町の20カ所以上のスパリゾートで利用している。町を歩くと、あちらこちらから湯気が立ち上り、まるで日本の温泉街を歩いているようだ。町には2カ所の大規模な公共温泉がある他、スパ施設の整ったホテルも並ぶ。

 スイスでは、温泉の源泉は持たず、スパホテルとして豪華な施設を兼ね備えたホテルも存在する。こうしたホテルは、体の治療というより、英気を養うためのリフレッシュ休暇として利用されることが多い。ジャクジー、マッサージ、エステ、サウナ等も完備したところも多く、プライベートな空間を楽しむ事も出来る。温泉水の代わりにシーソルトバスなど、美容効果のありそうな温水プールを完備しているホテルもあるのが特徴だ。

トゥーン湖畔のスパホテル、湖畔に設置されたシーソルトバス(冬の風景) swissinfo.ch

 昨年末に宿泊をしてきた、標高434メートル、フィアヴァルトシュテッターゼー(通称:ルツェルン湖)の湖畔に位置するヴェッギス(Weggis)の「パークホテル・ヴェッギス(Park Hotel Weggis)」では、本館にあるホテル客室のすぐ隣のコテージの棟に、貸し切り出来るプライベートスパが設置されていた。コテージ内は複数に分かれた部屋がプライベートのスパとなっており、スパの中には、専用サウナ、ソルトバス、リラクゼーションエリアと、マッサージ台や、シャワー、タオルも完備。快適な室温に保たれたスパ内に入ると、流れるリラクゼーションのBGMが心を落ち着かせる。サウナを利用する前に、まずは好みのお茶をいただきながら一休み。ヒーリング効果は抜群だ。スイスの公共サウナやホテルの共用サウナでは、タオルの持ち込みは不可。サウナ内は水着着用も不可で、男女が一糸まとわぬ姿で混浴というところがほとんどなので、サウナを貸し切り出来るプライベートスパは日本人にとってはありがたい。

スパホテルの中には、浴槽、サウナ、マッサージ台などを兼ね備えた、ラグジュアリーな完全個室のスパもある swissinfo.ch

  ゴージャスなスパ施設やスパホテルは、アルプスの山の麓に限らず、景色の良い湖畔や、都市部にもある。チューリヒにもホテル内やその他、数々の豪華スパが存在するのであるが、数年前にチューリヒ市にオープンした新しいスパ「テルマルバート&スパ(Thermalbad & Spa Zürich)」に注目が集められている。かつては古いビール工場だった建物を改装してリニューアルされたスパの屋上の温水プールからは、ぐるりと360℃チューリヒの町並みが眺められ、晴れた日には、遠くにアルプスの山々も見渡せる。チューリヒ市内にあり、町の中心部からも近いため、休日や会社帰りに日帰りで利用出来るところが大きな魅力でもある。

 ウェルネス休暇という言葉も浸透している程、国内ばかりでなく、海外からも温泉やスパを訪れる旅行客も多いスイス。今後、どのように人々を魅了し、温泉文化を発展させて行くのだろうか?また、リニューアルオープン予定のバーデンの温泉がどのように生まれ変わるのかも、とても楽しみだ。

スミス 香

福岡生まれの福岡育ち。都内の大学へ進学、その後就職し、以降は東京で過ごす。スイス在住11年目。現在はドイツ語圏のチューリヒ州で、日本文化をこよなく愛する英国人の夫と二人暮らし。日本・スイス・英国と3つの文化に囲まれながら、スイスでの生活は現在でもカルチャーショックを感じる日々。趣味は野球観戦、旅行、食べ歩き、美味しいワインを楽しむ事。自身では2009年より、美しいスイスの自然と季節の移り変わり、人々の生活風景を綴る、個人のブログ「スイスの街角から」をチューリヒ湖畔より更新中。

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