スイス人の男性医師がスキー選手にパフォーマンス向上のため、使用が禁止されているテストステロンと呼ばれる男性ホルモンの投与を勧めていたことが分かった。スイスのオンラインマガジン「Republik外部リンク(リプブリーク)」などが行った潜入取材で、カメラが現場の一部始終をとらえていた。
このコンテンツが公開されたのは、
男性はベルン州の医師で、名前は明かされていない。映像では、この医師が若いクロスカントリースキーの選手に、禁止薬物のエリスロポエチン(EPO)かテストステロンの投与を勧めている場面が映っていた。
選手からドーピングが見つからないかと問われると、医師は「尿検査を受ける確率はおそらく10万分の1。しかもスイス国内で尿検査を受けて『テスト(テストステロン)』が検出されても、問題はない。罰金100フラン(約1万1千円)、1年間の出場停止処分は受けるかもしれない。だが、法律的な前科を負うわけではない。その点では比較的大丈夫」と答えていた。
この映像が報じられた同じ時期には、ローザンヌにあるスポーツ仲裁裁判所(CAS)が国際オリンピック委員会(IOC)の五輪永久追放処分を不服として提訴したロシア選手39人のうち、28人を証拠不十分として処分を取り消す裁定を下し、大きな話題になった。
ドイツ語圏の日刊紙NZZがこの医師に取材したところ、医師は映像の内容を否定。近年、ロシア人のスポーツドクターと連絡を取り合っていたという疑惑についても否定した。医師の病院が最近、検察庁の家宅捜索を受けたことは認めたが、今回の映像の疑惑とは無関係だと語った。
国の業務にも関わる
日曜紙のゾンタークス・ブリックは、この医師が国の二つの業務に関わっていたと報じた。中佐の階級でスイス軍のスポーツ部門に従事していたほか、連邦移民事務局(SEM)にも所属し、難民申請者に医療サービスを提供していた。
スイス軍の広報担当者はスイス通信(SDA/ATS )に対し4日、疑惑発覚後、この医師との業務提携を停止したことを認めた。
医師はアマチュアのスポーツ選手でもある。潜入取材はRepublikのほか、ドイツのテレビ局ARD、英紙サンデー・タイムズ、スウェーデンのテレビ局SVTが合同で実施した。
おすすめの記事
クレディ・スイス危機への対応「時間がかかりすぎた」 議会調査委が報告書
このコンテンツが公開されたのは、
クレディ・スイスが経営危機に陥った責任を追究するスイス連邦議会の調査委員会は20日発表した報告書で、原因は長年にわたる経営上の不始末にあったと結論付けた。
もっと読む クレディ・スイス危機への対応「時間がかかりすぎた」 議会調査委が報告書
おすすめの記事
世界で最も急勾配のロープウェイがスイスで開業
このコンテンツが公開されたのは、
スイス中部ベルナーオーバーラント地方のシュテッヘルベルクとミューレンの間に、世界一急勾配のケーブルカーが開業した。
もっと読む 世界で最も急勾配のロープウェイがスイスで開業
おすすめの記事
2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。
もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
おすすめの記事
医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
このコンテンツが公開されたのは、
大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。
もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
おすすめの記事
スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。
もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
おすすめの記事
世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。
もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
おすすめの記事
スイスのドライバー、2割が飲酒運転
このコンテンツが公開されたのは、
欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。
もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
おすすめの記事
狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
このコンテンツが公開されたのは、
先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。
もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
おすすめの記事
自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
このコンテンツが公開されたのは、
今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。
もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
おすすめの記事
スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。
もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー
続きを読む
おすすめの記事
自転車の五輪金メダリスト、カンチェラーラ氏が不正?
このコンテンツが公開されたのは、
2016年リオデジャネイロ五輪の男子個人タイムトライアル金メダリストで、昨年引退したスイスのファビアン・カンチェラーラ氏(36)が不正を働いていたと、米国の元プロ自転車選手が自身の著書で訴えた。
もっと読む 自転車の五輪金メダリスト、カンチェラーラ氏が不正?
おすすめの記事
ロシア、18年冬季五輪出場禁止に
このコンテンツが公開されたのは、
国際オリンピック委員会(IOC)は5日、ロシアの2018年冬季五輪(韓国・平晶)への出場禁止を決めた。ただし「ロシアからの五輪選手」として出場する道も残した。
もっと読む ロシア、18年冬季五輪出場禁止に
おすすめの記事
スイス代表選手団、リオ五輪は団体競技出場者ゼロ
このコンテンツが公開されたのは、
南米初の開催となる夏季オリンピックのリオ五輪が5日、開幕した。今大会に出場するスイス代表選手のデータを見ると、意外な事実が浮かび上がる。団体競技に出場するスイス人選手は1人もいないという点だ。
もっと読む スイス代表選手団、リオ五輪は団体競技出場者ゼロ
おすすめの記事
治療以外でも使用されるリタリンのブーム
このコンテンツが公開されたのは、
注意欠陥・多動性障害 (ADHD)の治療薬リタリン(Ritalin)の生産は、過去10年間で約10倍 になった。近年は集中力を高めるためのドーピング剤やパーティ用のドラッグとして乱用されている。
もっと読む 治療以外でも使用されるリタリンのブーム
おすすめの記事
ドーピング・ハンター
このコンテンツが公開されたのは、
一方で、祖国の名誉をかけた「ホームゲーム」で、中国人選手が金メダルを獲得できるように、中国が薬物を乱用する恐れがあると、専門家は懸念を表明した。 オリンピックとドーピング オリンピックにはドーピング問題が潜んでいる。ド…
もっと読む ドーピング・ハンター
おすすめの記事
マルチナ・ヒンギスの引退とドーピング疑惑
このコンテンツが公開されたのは、
11月1日、チューリヒ市の記者会見場に集まったメディア関係者は、マルチナ・ヒンギスが腰部の故障のため女子テニス界から引退すると予測していた。しかし、ヒンギスはこの時引退を表明したのみでなく、ドーピングの疑いをかけられているというショッキングな事実も公表した。
もっと読む マルチナ・ヒンギスの引退とドーピング疑惑
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。