いよいよ夏休み。山や川、湖といったスイスの自然も輝きを増し、世界中から夏を過ごしに観光客がやってくる。スイスに住む日本人はどのような夏休みを過ごすのか?
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2016年からスイス在住。17年にswissinfo.ch入社。日本経済新聞社で8年間記者を務めた。関心テーマは経済、財政、金融政策、金融市場。
スイスインフォ日本語編集部は、読者や編集部員の人脈にアンケートを実施。81人から回答を得た。2018年の7~8月に取る夏休みの長さを聞くと、最も多いのは「1週間以上2週間未満」の22人。年末年始に日本に帰省するのを想定してか、スイス人が平均2週間取るのに比べると短めだ。
滞在先は、スイス国内に留まる人は「夏休み」をとらない人も含め32人。日本に帰省する人は19人と、暑い日本の夏を避けてかやや少なめ。スペインやイタリア、南仏など欧州のリゾート地にアクセスしやすいだけに、日本以外の国外に出る人も30人と多い。
32人はスイスでどんな夏を過ごすのか。スイス国内を旅行する人は14人。行き先はばらつくが、ツェルマット・マッターホルンに向かう人が3家族と最多。うち2家族は5週間の夏休み。同地は日本からの旅行者にも人気だが、スイス在住者は長めの滞在を楽しむ。
その他はグラウビュンデン地方やベルナーオーバーラント、エメンタール地方と行き先は分かれた。行き先を決めた理由もリピーターが4人、口コミが5人、インターネットの旅行サイトが3人と様々だった。
スイスの旅行で悩ましいのは予算だ。特にツェルマットなど人気の高い観光地はホテル代が高め。この夏ツェルマットに5週間滞在するジュネーブ在住の夫婦は、交通費や宿泊費で合計3千フラン(約33万6千円、食費は別)かかる。
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節約術を聞くと、多かったのは「お弁当を持っていく」ことだ。スーパーでパンやチーズ、フルーツを購入し自分で挟めば簡単で安上がり。ごくシンプルなサンドイッチや旬のフルーツがあれば、ハイキングでは澄んだ空気と絶景が最高の調味料になる。
交通費の節約には「スイス連邦鉄道のデイ・パスを利用する」手もある。1日75フランでスイス全国の鉄道やバス、船、一部の登山鉄道が乗り放題になる。居住者向けの半額カード(Half-Fare travelcard)を持っていることが条件だ。スイス国外からの旅行者向けには、有効期間が3~15日のスイストラベルパス外部リンクがある。
宿泊費を抑えるのはやや難しいが、「ミグロやコープなどスーパーの特売パック旅行からホテルを選ぶ」(ベルン州、在住歴18年)、「ホテルではなくキャンプ場を使う」(チューリヒ州、在住歴4年)といったアイデアも寄せられた。
特に旅行に出ない人も自然を楽しむ人が多い。海のないスイスだが、「湖畔を散歩・湖水浴」「山や川に行ったり、グリルを楽しむ」「地元のプールに通う」と水遊びには事欠かない。
自然派が多数を占める中、夏休みが1週間未満というバーゼル・ラント準州在住者(在住歴3年)は、「プレイステーション4」三昧だ。「ヨーロッパサーバーでのオンライン対戦や協力プレイでは、ヨーロッパ人と時差なくプレイでき、日本とは異なる独特の文化を楽しめる」
王道のハイキング
そんなスイス在住者らのお勧めの夏休みの過ごし方は?これまでに行ってよかった場所・やってよかったアクティビティを尋ねると、ダントツ人気は山のハイキング。優に23票が集まった。どの山でも「山岳地帯は気候が涼しく、トレッキング環境も整備されていて、のんびりしたい人ならどの世代でも楽しめる」(ヴォー州、在住歴12年)。そのなかでも在住者の隠れたお勧めはスイス南部のイタリア語圏、ティチーノ州だ。在住歴8年のチューリヒ在住者は「スイスの夏は意外と気温が高いが、山岳部は涼しく、なんといっても『ザ・スイス』な景色が素晴らしい」と語る。山小屋に泊まり、相部屋になった登山愛好家と話すのも楽しいと言う。
山を楽しむには自分の体力・経験に合ったコースを選ぶのが重要だ。在住歴16年の荒井睦美さん(ベルン州)は「山方面へ行くときはその地域の観光案内所などが運営しているサイトを見て簡単に下調べし、到着したらまず案内所へ行って地図をもらう」という。また登山道を示す標識のチェックも重要。黄色い標識なら軽装でも歩けるが、赤と白のマークがついている道は本格的な山岳コースだ。「一度、簡単だと思っていたコースの一部に赤白コースがあるのを見落とし、崖っぷちに出てしまった経験があります。それ以来コースの下見は欠かさないようにしています」(荒井さん)
山の過ごし方はハイキングだけではない。キャンプにも票が集まった。今夏、グリンデルヴァルトで初めてキャンプカーでのキャンプに挑戦するヴォー州在住の家族。「どこに車を止めたらいいのかも分からなかったが、レンタルしたお店が色々教えてくれた」という。
その他、「8月にはキノコやブルーベリーの採集など、山の生活に触れる」(ティチーノ州、在住歴35年)との情報もあった。また「暑い日のハイキングの途中に、山の合間にある冷たい水の湖に飛び込む!」(バーゼル・シュタット準州、在住歴8年)のもお勧め。山歩きでも水着など濡れてよい服を持っていくと、一歩「スイス通」に近づけそうだ。
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川の鉄板はゴムボート
川・湖派も負けていない。ベルン在住者はアーレ川、バーゼルならライン川、ジュネーブ州・ヴォー州はレマン湖と、地元の水辺をこよなく愛する。「美しい湖やアルプスを見ながら、お茶を片手にゆっくり時間を過ごす」(ベルン州、在住歴2年)だけでも贅沢な夏休みになる。
川遊びの鉄板はゴムボートでの川下り。また専用の遊泳バッグを使ってぷかぷか浮けば、天然の流れるプールだ。ただ流れが速いため、岸に上がるのにはちょっとしたコツが要る。初めて泳ぐ人は必ず経験者に同伴してもらおう。
他に、「パラグライダー」(ヴォー州、4年)や「(8月1日の)建国記念日にライン川で上がる花火を見る」(バーゼル・シュタット準州、16年)、「毎年夏休みにツアーをしているサーカスを見に行く」(バーゼル・ラント準州、16年)との声も聞かれた。
一方、夏のアクティビティとしてスイス人に人気のマウンテンバイクやヨット、ウィンドサーフィンを挙げる声はゼロ。日本人には不向きなのかもしれない。
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日本政府観光局の統計によると、スイスからの訪日者数は2003~16年の13年間で155%増加している。スイスの観光業者の間でも、とりわけここ2年間は一種の「日本ブーム」が訪れているという共通の認識みられる。
16年の訪日客数の中で最多だった中国人の約637万人に対して、スイス人の約4万4千人は一見僅かに見えるが、両国の人口に占める割合で見ると、スイスにおける日本の人気は高いと言える。中国の場合、人口の0.47%が同年に日本を訪問しているのに対し、スイスは0.53%。欧州で訪日者が最多だった英国の0.45%より多い。
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