安楽死で逝ったスイス元国会議員 ティス・イェニー①
2014年11月、1人の元国会議員が62歳でこの世を去った。彼の死が国内メディアの大きな注目を集めたのは、人気の政治家だったからだけではない。安楽死を選んだからだ。
元国会議員のティス・イェニーは2014年2月に胃がんと診断された。積極的な治療を望み、がんの摘出手術を受けた後、放射線治療や化学治療を何回も受けてきた。
つらい治療にも気丈に振る舞うが、不安や落ち込みはイェニーも経験した。「1年以上生きられるか」。イェニーの問いかけに、医者が返した言葉は「分からない」。事実上の余命宣告だった。
放射線治療が終わり、イェニーは、最も不安に感じていることを医者に素直に打ち明けた。
2014年11月30日に放送された、スイス公共放送(SRF、独語圏)の報道番組「Reporter」のドキュメンタリー映像。胃がんが悪化した際には安楽死すると公言していた元上院議員ティス・イェニーに密着し、がんとの闘いや自殺ほう助についての思いを聞いた。
イェニーはグラールス州出身。建設会社社長で、1998年6月に保守系右派・国民党から全州議会(上院)議員に初当選。政治の透明性のためなら党是に反する行動も辞さず、上院の電子採決システム導入に大きく貢献した。
だが2014年2月、胃がんを理由に政界を引退。9カ月後の同年11月、家族が見守る中、グラールス州の病院で自殺ほう助により亡くなった。
swissinfo.chでは2020年12月18日から同ドキュメンタリー映像(計22分)を4回に分け、日本語字幕を付けて配信する。
(敬称略、文・字幕翻訳/宇田薫)
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