WTO閣僚宣言、医薬品の特許権保護を制限する特別宣言を採択
カタール・ドーハの世界貿易機関(WTO)閣僚会合は14日、時期多角的貿易交渉の開始を盛り込んだ閣僚宣言を採択した。スイスが関心を持つ、エイズなど感染症治療薬を途上国が調達できるようにするための医薬品の特許権保護を制限する特別宣言も採択された。
6日間の交渉の結果、2年前シアトル会合で途上国と先進国の利益の衝突で失敗に終った医薬品の特許権に関する合意がまとまった。パスカル・クシュパン経済相は「シアトルでの失敗を乗り越え、経済成長の再起動のための合意に達したことに大変満足している。」と述べた。
ドーハ会合でスイスは特許権と知的所有権の保護にことさらこだわった。人命よりも特許を優先させていると非難されているスイスの医薬品企業は、WTOの貿易関連知的所有権に関する協定(TRIPS協定)に示された特許権の保護は侵害されるべきではないと主張してきた。交渉で大手薬品企業を抱えるスイスと米国は、保健上の緊急事態に直面した時に限り特許薬のコピー薬購入を許可するという提案を支持した。ドーハ会合で達した合意は、公共衛生上の必要を示した国は、医薬品の特許権を20年間保障するというWTOの規程を免除されるというもので、スイス代表は合意を歓迎している。また、途上国および国際援助機関なども、この合意により毎年途上国で何百万人もの人々の死因となっている感染症の治療薬が安価に手に入るようになるとして歓迎している。
1994年に制定されたTRIPS協定は、新薬を含む全技術分野での特許は20年間保証されるが、特別な状況下での特例は許可するという内容だった。今回の合意は、TRIPS協定がWTO加盟国の社会保健上必要な政策を妨げないようにしたものだ。国境なき医師団は、この合意を「公衆衛生は特許権保護よりも重要であることを明白に示したもの」と歓迎するとswissinfoに語った。
一方、スイス医薬品企業連合、インターファーマの代表トーマス・クエニ氏は、「ドーハ会合の宣言が、新薬の開発・研究における知的所有権の重要性を認め、特許権の尊重を承認したことに満足している。また、TRIPS協定が公衆衛生、特にエイズ、結核、マラリアなど感染症が蔓延している地域での保健・医療に必要な柔軟性を含んでいることを確認したのは良いことだ。」とある程度の歓迎の意を示した。その上で、クエニ氏は、アフリカでのエイズ治療の妨げとなっているのは、民間および公的資金の不足で医薬品の特許ではないと述べた。
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