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スイス、ロシアへの独自制裁は回避

「プーチンを止めろ」と書かれたプラカード
Keystone / Marcel Bieri

ウクライナ紛争がエスカレートしている。スイスは独自の制裁を科さず、欧州連合(EU)の制裁を支援する方針だ。

ロシアがウクライナを攻撃した直後、スイスはロシアの侵攻を強く非難した。

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イグナツィオ・カシス連邦大統領は24日午後、スイスが渡航・金融分野でEUの制裁を支援すると発表。ただ今後も独自に制裁措置を講じることは控える構えだ。

具体的には、EUが制裁リスト上の人物の資産凍結を行う際、スイスはこの人物からの新たな資金を受け入れないようにするだけだ。これは制裁対象のロシア人がEUの措置回避にスイスを利用する事態を防ぐことが目的だ。

スイス政府側は、同国がロシアとジョージア間の利益代表を務めたことに言及。紛争当事国の仲介役としてのスイスの対応は正当であるとし「ある一方の立場に近づきすぎると、その役割を適切に果たすことはできない」と述べた。

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「ヨーロッパに平和を!」

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は24日、ウクライナに侵攻したロシアを最も強い言葉で非難した。首都ベルンで抗議デモに参加した人々も、憤りの声を上げた。

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏はツイッター上で、欧米に対しロシアへ厳しい制裁を科すよう訴えた。

既に制裁を発動したEUはさらなる措置も辞さない構えだ。米国は西側諸国に制裁の協調姿勢を呼び掛ける。

スイス連邦政府は当初、スイスがEUの制裁の迂回路として利用されるのを避けたい、と述べただけだった。そのためにスイスは他国の動向を見極めるとしていた。2014年、ロシアがクリミアを併合した時も、スイスは同様の対応を取った。

スイス連邦政府が対応を決める際には、さまざまな要因が絡む。

中立性。スイスは紛争当事国2カ国とは比較的大きく離れた距離を保たなければならない。ただし、ロシアの攻撃のような明らかに一方的かつ国際法に違反する場合はこの限りではないと、国際法の専門家は考える。

紛争の調停役となる可能性があること。スイスは昨年6月、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とジョー・バイデン米大統領の初会談をジュネーブで開くなど、両国の仲介役としての役割を繰り返し提供してきた。制裁はこの役割を傷つける可能性がある。

ウクライナ改革会議:スイスは今年7月、「ウクライナの改革に関する国際会議」を同国南部ルガーノで開催する。これはイグナツィオ・カシス大統領の威信をかけたプロジェクトであり、これまでウクライナを新興市場として見てきたスイス経済にとっては重要なプラットフォームとなる。今スイスが連帯感を示さないと、ウクライナの機嫌を損ねることになりかねない。

EUとの関係:EUとスイスの関係は今、どん底にある。スイスはこれ以上の悪化を防ぎたい考えだ。EUが制裁を決定すると、スイスは行動せざるを得なくなる。スイスはEUの制裁を対面通り踏襲するのではなく、スイスが迂回地とならないような措置を取る。

経済的関係:スイスには、ロシアと実質的に関わりを持つ、または石油やガスなどロシアの原材料を取引する商品大手企業が数多く本社を置く。

在ベルンのロシア大使館によると、ロシアの原料取引の80%はスイス経由だ。トラフィグラ、ヴィトールはロシア国営石油大手ロスネフチのプロジェクトに出資するほか、ロシアの石油を取引している。同国の石油取引企業グンヴォルについても同様だ。

物議を醸すロシア・ドイツ間の天然ガスパイプラインプロジェクト「ノルド・ストリーム2」の本部もスイスにある。米国は23日、同プロジェクトの事業会社などに対し制裁を発動した。スイスはこの面でも、国際的に非常に大きな影響力を持つ。

スイスの銀行にあるロシア資金:在ベルン・ロシア大使館によると、ロシアの大手銀行スベルバンクとガスプロムバンクもスイスに支店を構えている。スイスはロシアの民間資本を圧倒的に多く受け入れている国でもある。ロシアの中央銀行によると毎年、50~100億ドルのロシアの個人マネーがスイスに流れ込んでいる。こうした観点からも、国際社会がスイスに圧力をかける可能性はある。

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在外スイス人:ロシアには約700人のスイス人が住む。スイスから厳しい制裁を受けた場合、彼らに影響が出ることは必至だ。ウクライナには210人のスイス人がいる。

抗議行動

スイスでは、1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争時、1万人以上の人々が抗議活動をした。だがここ数週間は、ウクライナ危機がエスカレートする兆しがあっても驚くほど静かだった。

ベルンのロシア大使館前では23日夕、約100人が抗議。ウクライナ東部からのロシア軍撤退を要求した。

デモ
軍隊なきスイスを目指す会(GSoA)と社会民主党青年部(JUSO)のメンバーは23日、ロシア大使館前でウクライナからのロシア軍撤退を訴えた Keystone / Marcel Bieri

社会民主党などの団体は、週末の平和デモを呼び掛けている。

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スイスでは「#StandWithUkraine」というハッシュタグで、多くの人々が怒りをあらわにした。

社会民主党のファビアン・モリナ国民議会議員は「ロシアはウクライナに対して侵略戦争を開始した」とツイート。「この酷い国際法違反は、欧州の平和を破壊している。スイスは欧州のパートナー国と全面的に連帯しなければならない」と呼び掛けた。

同党のジョン・プルト国民議会議員は「プーチン氏はウクライナに戦争を仕掛け、国連憲章を破っている。このような国際法違反の前にして、中立はありえない」とツイート。スイスは制裁を支持すべきで、内閣がしり込みしていることは受け入れられない」と批判し「寡頭政治のプーチン体制は財政的に干上がらせるべきだ」と訴えた。

スイスメディアの反応

スイスのメディアは、ロシアのウクライナ侵攻は明確な国際法違反のみならず、欧州の政治的転換点を告げるものだと報じた。

ドイツ語圏の日刊紙NZZは「暴君プーチンに対する米国や欧州の中途半端な政策は失敗した」と報道。ロシアから大陸全体に対する危険性を考えると、今こそUターンが必要だ、と論じた。

同じく独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーも「古き世界の終わりが始まった」との見出しでウクライナ危機を報道。「この黒い一日の後には、今までと同じものは何もない」と述べた。

同紙はプーチン氏が共感も均整感覚も失っているとし「厳しい制裁の議論は、奇妙なほど場違いで無力に思える。今のところ、何物もその狂気を止めることはできないということが明らかになったからだ」などと報じた。

しかし、スイスには右派保守界隈から共産主義者まで、いわゆる「プーチン理解者」も存在する。

保守系右派・国民党のイヴェット・エスターマン氏は地域紙アールガウアー・ツァイトゥングに対し、東西間に緩衝地帯を設けることは理にかなっている、と述べた。緩衝材はウクライナ、ドンバス地方であり、北大西洋条約機構(NATO)はこれ以上ロシア国境に近づいてはいけない、とした。

スイス・ロシア友好議員連盟の代表を務めた中央党のフィリッポ・ロンバルディ氏も同紙に「西側は少なくともロシアと同じだけ過ちを犯した」と述べた。

スイスフランへの影響

株価が急落する一方で、原油や金の価格は上昇している。安全通貨であるスイスフランに退避する動きもある。

(独語からの翻訳・宇田薫)

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スイスはロシアの資金を凍結すべき?中立性に違反する?

【閲覧のみ可】ロシアのウクライナ侵攻を受け、スイスは現時点でロシアに対する独自の制裁措置を控えている。スイスでは個人の資金が凍結されることはない。それはこの国に「紛争当事国の仲介役」という役割があるからだ。

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