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バーゼルワールド 「本物の価値」へ戻るとき

時計産業のバロメーター役を果たすバーゼルワールドが4月2日までバーゼルで開催されている Keystone

時計業界で世界一の規模を誇る、国際時計宝飾見本市「バーゼルワールド2009」が3月26日から4月2日まで開催されている。

「バーゼルワールド ( Baselworld ) は時計業界の動向を示すバロメーターだ」とフランソワ・ティエボー氏は言う。スイスの展示者委員会の会長を務めるティエボー氏はまた、「時計産業は本来の伝統に戻り、常軌を逸した高額時計などの異常さから抜け出すべきだ」と力を込める。

swissinfo : 世界は同時不況の嵐にさらされていますが、時計業界が受けている打撃はどの程度で、例えばそれは風邪か、インフルエンザか、肺がんのどれにあたりますか。 

ティエボー : 回復できない病気では決してありません。今回の経済危機は「信頼の危機」です。人は現金を持たず、貸付がストップされ、行き詰まり感はメディアによって充分過ぎる程伝達され、人々は時計などを買う決断を先延ばしにしています。

わたしが属する「スウォッチ・グループ ( Swatch Group ) 」は世界中に店舗を構えていますが、失業率の伸びにもかかわらず時計の消費は止まってはいません。また現在G 20がロンドンで開催されるのを見越した景気の僅かな上昇傾向を感じます。早く景気が復活してほしいと願うばかりです。

swissinfo : 将来に希望を持っていますか。また、第2の不況が襲ってくるという危機感はありませんか。

ティエボー :  確かに今回は、1930年代以降で最大の不況ですが、この不況は精神性を変えるのに役立つと思います。「本物の価値」へと目を向ける契機になる。ここ最近の常軌を逸した異常さ、特に価格においてですが、それが修正され、時計製造業の本来の伝統、つまり時計職人の技を正当に評価する方向へと向かうようになると思います。今こそ「振り子をきちんと時間に合わせる時機到来」ということです。

swissinfo : 時計業界では、世界のどの地域が特に打撃を受けていますか。

ティエボー : 南北を合わせたアメリカ大陸が一番ひどく、中でもアメリカが一番打撃を受けました。ほとんど20、30、いえ60%も販売が低下しています。ヨーロッパで見ると、スペインが1年前から不動産業界の低迷で、時計の販売も伸び悩んでいます。

しかし、アラブ諸国はうまく行っています。アラブ首長国連邦も不動産業界が問題だといわれていますが、イースターのバカンスにアラブ諸国からスイスに来るツーリストでスイスのホテルは満杯です。ロシアからのツーリストは減ると思いますが。われわれにとって大切なことは、販売量が昨年と同じ位になることです。

アジアで一番打撃を受けたのは、日本です。しかし中国はうまく行っていて、8%の販売成長率が期待されます。

swissinfo : 多くの時計メーカーが、スポーツ界のスポンサーになっていますが、この時計業界の後退はスポーツ界にも影響を与えるのでしょうか。

ティエボー : 今のところスウォッチ・グループは、どのブランドもスポンサー経費を削っていません。それを喜んで提供する時期ではありませんが。すでに契約を交わしてしまったということもありますし、またスポンサーを辞めると一般の人にネガティブなサインを送ってしまうと思います。

時計業界の大手は、もし利益が少なければ、材料の購入費用を抑えたり、交通費や交際費を節約します。今日、大手は時計の技術と人材は保護することに合意しており、早急に解雇を行なう方針は取りません。

swissinfo : グレー・マーケット ( 規制機関による正式な流通経路から外れたルートでの販売を行なう ) に対し、スウォッチ・グループは対策を立てていますか。

ティエボー : うまく行っているときは問題ありませんが、一度景気が後退するとグレー・マーケットも影響を受け、極端に安い値段で商品を売却してしまう小売業者が出てきます。

この現象はいくつかのブランドにとって大きな痛手になりました。しかし商品を売った後のアフターサービスなどを保証する販売契約が存在します。つまり、正式な流通経路から外れて商品を購入するのは、消費者にも危険が伴うということです。

児童労働などを利用したりする闇商売を繁栄させるのではなく、正直に働いて物造りをする人たちと取引をすることです。つまりスイス時計製造の高い質とラベルを信用してほしいと思います。

swissinfo、聞き手 オリビエ・グリバ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳 

国際時計宝飾見本市である同展は、時計業界で世界一の規模を誇る。今年は3月26日から4月2日まで開催されている。

今回は世界45カ国から1952の出展者が最新作を展示する。


展示者の3分の2がヨーロッパから、残り3分の1がアジアから。

全展示面積16万平方メートルの3分の2を359の時計のメーカーが占める。

スイスからはメーカーの95%が参加している。

およそ10万6000人の入場客と3000人のジャーナリストが訪問すると見込まれている。

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