スイス写真史において傑出した写真家の一人と見なされているヤコブ・トゥッゲナーの作品140点が、ヴィンタートゥールのスイス写真財団外部リンクで展示されている。展示作品のすべてが機械をテーマにしたものだ。会期は2018年1月28日まで。
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専門分野は連邦政策。以前はスイス通信やラジオ・フリブールに従事。
Olivier Pauchard (文) & Marie Gfeller (写真の編集)
ヤコブ・トゥッゲナー(1904生まれ、88年没)の表現力の豊かさと彼の写真がもつ強烈な個性は、スイス写真界で異彩を放っている。トゥッゲナーはさまざまな世界に心を奪われていた。例えば、舞踏会やパーティー、ナイトライフに漂うムードを写真に再現できる者は彼をおいて他にいない。
それでも、トゥッゲナーが最も通じているのは、おそらく製造業界や工場だろう。というのも、彼には機械製図工の職業教育を受けたのち、製造業で働いた経験があるからだ。トゥッゲナーが芸術や写真の世界に入ったのは、世界大恐慌のあおりを受けて失業した20年代末のことだ。
企画展「Jakob Tuggener – Machine Age外部リンク(仮訳・ヤコブ・トゥッゲナー、機械の時代)」は、30年代初頭から50年代末のスイス産業界を、芸術としてだけではなく、あるがままの姿としても見せてくれる。写真や製本見本に加えて、別会場で上映されるトゥッゲナーの短編映画も一見の価値がある。
(仏語からの翻訳・江藤真理)
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座部に穴が開いているもの、肘かけがあるもの、揺り椅子用の脚が付いているものなど形はさまざまだ。しかしどれもフォルムが控えめで、素朴で頑丈、機能的。ひと目で椅子だとわかる。製造したのは、スイス最古の家具メーカー、ホルゲングラルスだ。
スイス国旗が、ホルゲングラルスの製造工場にある唯一の飾りだ。工場の機械は1950年代から使われている。ここでは昔ながらの技術と手作業、コンピュータ操作で行う生産工程を組み合わせて製造が行われている。
数々のコレクションは、マックス・エルンスト・ヘーフェリ、マックス・ビル、トリックス&ロバート・ハウスマンやハンネス・ヴェットシュタインなど、著名なスイス人デザイナーたちによってデザインされた。
「ホルゲングラルスは建築家やデザイナーたちから高い評価を得ている。その時代を超えた普遍的なデザインは世界中で愛されている」と話すのはマルコ・ヴェンガー氏。2012年からホルゲングラルスの経営責任者を務めている。
(写真:Anne Gabriel-Jürgens 文:Andreas Keiser、swissinfo.ch)
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