決勝、山本雅也君が3位入賞
第41回ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝で2日、石川県能美市「横倉明子バレエ教室」の山本雅也君(18)が3位で入賞を決めた。決勝に進出した他の日本人、栁澤郁帆(かほ)さん、アクリ士門(しもん)君、吉田合々香(ねねか)さんは入賞を逃したが、昨日よりさらに高い表現力で踊った。1位にはブラジルのアドナイ・シルバ君(15)が選ばれた。
また、決勝に進出したスイス人に贈られる「最高のスイス人賞」をフォーガティーみこさんが受け取った。フォーガティーさんはスイスと日本両方の国籍を持ち、今回はスイス国籍で出場した。
清潔感溢れる踊り
「信じられない」と山本君は受賞後興奮気味に話した。8人の入賞者の中に入りたいと思っていたが3位をもらうとは思っていなかったと言う。「昨日も十分踊れたが今日も十分力を出せ、自分で納得できる踊りができた」
クラシックでは高いジャンプと正確な動きですっきり完璧に決め、観客席から割れるような拍手とブラボーの歓声が沸いた。「踊り出すと自分の世界に入り込んでいて、あまり観客の反応が分からなかったけれど、うれしかった」
コンテンポラリーも一つ一つの動きを丁寧に仕上げ、内面が表に出るような素晴らしい表現だった。
審査員を務めた熊川哲也さんも「将来大いに期待できる。ちょっとがんばれば1位にも2位にもなれた才能だ」と、コメントした。今まで1週間スタジオで踊るのを見てきたが、むしろステージに上ってから輝いてきたという。「素直で清潔感溢れる踊り。また集中力もあった。このまま伸びて行けばいい。方向性は間違っていない。また足先やラインがきれいなので、ヨーロッパで踊るのに向いている」と、高く評価した。
山本君自身、受賞前のインタビューで、「ローザンヌで色々な経験ができてよかったが、特に自分が今までやってきたことがまちがっていなかったと確認できたことが一つの成果だった」と話している。
将来はクラシックもコンテンポラリーも踊れるダンサーになりたい。憧れは、まさに両方を踊れるフランス人マニュエル・ルグリさん。現在ウィーン国立劇場で芸術監督を務めている人だという。
メガの可能性
今回は入賞者8人のうち7人までが男子だったが、そのトップに選ばれたシルバ君はまだ15歳。細くて背が高く顔に幼さが残る。
しかし、舞台ではクラシックもコンテンポラリーも表現力に富む完成度の高い踊りを見せてくれた。本人に聞くと「練習してきたものをあまりあがらず全部出せた。今日の方が昨日よりよくできた、楽しく踊れた」と微笑んだ。
審査委員長のフランク・アンダーソンさんは、「シルバ君は今日が良かっただけではない。ローザンヌの初日から光っていた。全くダンスの世界に汚されていない。ただ、ダンスが好きで踊っているだけだ。それがいい。今後伸びる可能性は『メガ』ほどある。ある意味で歴史的なダンサーが現れたかもしれない」と絶賛した。
将来はまだ決まってないが、「クラシックもコンテンポラリーも両方やっていきたい。学校はロワイヤルバレエスクールかハンブルクかどちらでもいい」と、いたってのんびりした調子で話した。
アンダーソンさんは、「シルバ君がすくすくとそのまま伸びていける学校が選べるといいのだが」とコメントした。
1位 アドナイ・シルバ君(ブラジル)
2位 ウエンタオ・リ君(中国)
3位 山本雅也君(日本)
4位 レティシア・ドミニックさん(ブラジル)
5位 セザール・コラレス君(カナダ)
6位 ジョエル・ヴォエルナー君(オーストラリア)
7位 フランシスコ・セバスティアーノ君(ポルトガル)
8位 ジンハオ・チャン君(中国)
このコンクールはローザンヌで1973年、ブランシュバイグ夫妻によって創設された。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクール。
若いダンザーの登竜門と言われる。その目的は伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。
今年は、2013年1月27日から2月2日まで開催された。
コンクールの出場者を決める予選は、2012年10月にビデオ審査で行われた。その結果、世界32カ国から254人(女子189人、男子65人)中、75人(女子38人、男子37人)が選ばれた。
日本からは、昨年に続き最多の12人(女子8人、男子4人)。
昨年と同様、二つの年齢グループ(15、16歳と17、18歳)に分かれて4日間の練習を行い、この練習の採点合計と2月1日の準決勝の採点の合計で2月2日の決勝進出者が選ばれ、2日の決勝で8人の入賞者が選ばれた。
この8人は、希望するバレエスクールに学費は無料で入学でき、同額の奨学金16000フラン(約163万円)を滞在費として受け取る。また年齢が17、18歳だとバレエカンパニーに研修生として入れる。
コンテンポラリーに力を入れる
決勝に進出したが惜しくも入賞できなかった日本の栁澤さん、アクリ君、吉田さんなどに対し、熊川さんは「内面にみんな良いものを持っている。だが、それを出す方法を学ぶとさらに良くなると思う。例えば顔をいつも同じ表情ではなく、(メロディーが変わるにつれそれに合わせるように)変える工夫などが必要だ」とアドバイスした。
一方アンダーソンさんは、「今年は全体にレベルが高く、特に男子のレベルが高かった」と総括した。これはたまたまで来年は女子の入賞者が多いということになるかもしれない。そういったものだとしながらも、「3年前から男子のレベルが全体で上がってきているのは確かだ。また今回に関して言えば、女子には訴えるようなパンチのきいた表現力をもう少し出してほしかった」と語った。
また、今年の特色として、「世界的にダンス界の動きが、コンテンポラリーをもっと促進させる方向にある。そのためローザンヌもコンテンポラリーに力を入れ、今年のバリエーションを作った振付家ゴヨ・モンテロさんを呼び、直接生徒の指導にあたってもらった。そこで生徒が伸びていく姿を見るのは、喜びだった」と話した。
さらに、「ローザンヌが素晴らしいのは1位を勝ち取るコンクールではなく、奨学金を受け取るためにみんながフレンドリーに一緒に努力する場だからだ」と、改めてローザンヌ国際バレエコンクールを高く評価した。
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