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スイスのアマチュア天文家、お手柄

夜空を巡回 : 地球に近い小遊星で2番目に大きい「エロス」

アルプスの少女ハイジ、赤十字の生みの親アンリ・デュナン、数学者オイラー。スイスの有名人が星の名前になっているのは珍しくない。しかし、普通の人が新しい星を発見することは、めったにないことだ。

スイスのアマチュア天文家が、夜空に小遊星を発見した。彼はこの星にチューリヒ近郊の美しい村の名前を付けた。新しい星の名前はヴィーセンダンゲン ( Wiesendangen )。

 ヴィンタートゥール ( Winterthur ) の地元の天文台で、マルクス・グリーサーさんが望遠鏡をのぞきながらこの小遊星を見つけたのは2004 年のことだった。天上に光るこの星の直径はたった1キロメートル。太陽の周りを時速8万4000キロメートルで回っており、1周するのに3年6カ月かかる。

アマチュア天文家、お手柄

 グリーサーさんはこの星に、故郷の小さな村の名前を付けることにした。

 グリーサーさんは全くのアマチュアだが、これまでに3個の星を発見している。名前は「スイス」を意味する「ヘルヴェチア」、「ホイベルガー」、「ヴィンタートゥール」。これは決して簡単なことではなかった。彼はアメリカ・マサチューセッツ州にある小遊星センターに、今までに1万個以上の星について「新星の可能性がある」と報告している。そして今度の発見を含め4個だけがやっと本当に新しい星の発見だと認められたのだ。

 ベルン大学天文学センターのトーマス・シルトクネヒト教授によると、新しい星を見つけるのが難しくなったのは1990年からだ。「大きい星のほとんどは、火星と木星の間にあります。1990年までに、もう見つけられるものは結構見つけてしまっているのです」

 「まだ発見されていないようなものもありますが、それらはずっと遠くにあるので、めったに見つけることはできません。そんな星を見つけるには、アマチュア天文愛好家が使うような望遠鏡では、非常に難しいと言えます。普通は、自動スキャンシステムなど、特別なコンピュータが必要になってくるでしょう」

スイスと星

 宇宙の奥深くにある星を見つけるのは、現代のコンピュータを駆使しても簡単なことではない。通常、天文学者たちは目星を付けた星を写真に撮り、星が移動していないかどうか比べなければならない。

 ベルン天文学センターによるとスイス人が発見した星は、大体120個くらいらしい。ほとんどが、天文学者パウル・ヴィルトによって発見された。彼自身も自分の名前を星に付けている。

 ハイジや数学者オイラー、赤十字の父デュナン以外にも、アインシュタイン、ルソー、フリューの聖ニコラス、作曲家アルテコール・オネゲルなど、多くのスイス人の名前が星になっている。人間だけではない。ローザンヌ、バーゼル、ルガーノなどスイスの地名も星になって空に輝いている。ヴィーセンダンゲン市の市長は、市がこの列に加わったことにほくほく顔だ。

支えているのはスイス人の星好き

 アマチュア天文家のグリーサーさんがさほど大きくない望遠鏡を使って新しい星を発見したことは、本当に珍しいことだ。前出のシルトクネヒト教授は、この背景には「スイス人の星好き」があるのではないかという。

 「毎年何千人もの人が、公開天文観測に参加します」。しかし実際に天文の専門家となると、そんなに多くはないらしい。「この分野で働いている科学者はほとんどいません」

 さて、いつか星が地球の軌道を横切って我々にぶつかる、なんてことはないのだろうか。「そんなことになったら大惨事ですね」と教授はうなずいた。「まあ、確率で言えば、道路を横切って交通事故にあう方が、惑星の衝突よりずっと可能性が高いですけれどね」

swissinfo、スコット・キャッパー 遊佐 弘美 ( ゆさ ひろみ ) 意訳

小遊星は小惑星とも呼ばれている。

太陽の周りを公転しており、毎月5000個が発見されている。

小さなもので37万個近くあるが、このうち目で見える大きさのものは約15万個。

これらは、国際天文学連合によって公式に名前を付けられている。

スイス人の名前が付けられているのは、個人のものも含め、20個を超える。

スイスには、バーゼル、ベルン、チューリヒ、ジュネーブに天文台がある。

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