スイスの「なまはげ」・レッチェンタールのチャガタ
ヴァリス州レッチェンタール谷のカーニバルで、村の青年達は手作りの伝統工芸品の木彫りの面を付け、地元の人々や観光客を脅かしながら走り回った。
ヴァリス州レッチェンタール谷のカーニバルで、村の青年達は手作りの伝統工芸品の木彫りの面を付け、地元の人々や観光客を脅かしながら走り回った。
この期間、知らずにレッチェンタール谷を訪れた観光客は、2度とスイスに来ないかもしれない(または毎年やって来るか)。ホテルや土産物店の従業員の歓迎を受けるかわりに、カーニバル週間のレッチェンタールでは、「チャガタ」が村を支配する。
毎年「穢れた木曜日」に恐ろしい半人・半動物のチャガタが出て来て、静かで平和な谷中を暴れ回る。が、チャガタの面をはがすか、毛皮を引き裂く勇敢な(おバカな)人は、レッチェンタールで最も結婚相手に望ましい青年男女を見つけ、びっくりする事だろう。レッチェンタール谷では、未婚者だけがチャガタに扮装できるという古代からの伝統を守っている。昔は独身男性に限っていたが、近年は女性も参加するようになった。
チャガタの起源は、定かではない。が、レッチェンタールの住民は、後に考古学者に信任された説を信じている。村人のエルンスト・リーダー氏は、チャガタは、夜になると谷に定住したアラマン族(ゲルマン系)を襲った盗賊団だと言う。盗賊達は、毛皮を纏い、面を付けていたという。バーゼル大学の考古学研究グループは、3000年前のものと推定される野営地を発掘し、レッチェンタールを襲った外敵の存在を確証した。
盗賊団は古代レッチェンタールの住民を脅かした事だろう。が、現代では恩恵をもたらしている。チャガタは谷に毎年何百万スイスフランもの観光収入をもたらす。
しかし、チャガタはいつも人気があるわけではない。1987年地方行政区委員会は、度を越したチャガタの態度に悩まされ腹をたてた観光客の訴えを受け、日没後のチャガタ出撃を禁止した。が、地元青年達の抗議により、翌1988年禁令を解かれた。
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