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ストップ、自殺

2000年9月、1人の高校生の自殺を契機にジュネーブの高校生200人が集まり、デモを行った ( 写真提供 : STOP SUICIDE ) 

いじめで自殺する中学生が跡を絶たない日本。スイスでも20〜25歳の青年の死因で1番多いのは自殺、次が交通事故だという。15〜19歳では1位が交通事故で2番目が自殺。

しかし交通事故でも自殺しようと多量のドラッグを使用して車に乗る例も多く、いずれにせよ自殺はスイスの15〜25歳の青少年の主な死因といえそうだ。

 「高校生の時、校友が自殺してショックを受けました。6年前はまだ自殺について話すのはタブーという雰囲気がありました。このタブーを打ち破るために何かしたいと考えたのです」と語るのはジュネーブで若者の自殺防止のNGO「ストップ・スイサイド( STOP SUICIDE ) 」の創設者の1人でコーディネーターを勤めるフロリアン・イルミンゲールさん。

ストップ・スイサイド

 イルミンゲールさんは校友の死後、ただちに、高校生たちによるデモを組織。その3カ月後に、高校生10人でストップ・スイサイドを立ち上げた。目的はタブーを打ち破り、自殺願望を学校などで1つの病気として取り扱われるようになること、学生たちが自殺について情報を得てオープンに話せるようになることだった。

 「この6年間で1番変わったことは、学校関係者がタブーにしておきたかった自殺を、今は認め予防したい、しかしどうやったら予防できるのかという態度に変わってきたことです」とイルミンゲールさんは成果を喜ぶ。

 ジュネーブ州と市からの援助、個人の資金提供で成り立っているこの組織で働くのは4人の大学生と高校生たちだ。各々週8時間、授業の合間をぬって事務所に通う。

 「若者が若者のことを考えるという点ではスイスでただ1つの組織です。日本の学生が同じことを考えるなら援助したいものです」と言う。

 具体的にはパンフレットを学校の「健康を考える日」に配ったり、ちょっとした演劇を学校の休み時間に行ったり、もちろんサイトで色々な自殺予防援助機関の情報提供も行っている。

 「自殺した若者についてオープンに話しあったりすることはとても大切です。そういう空気に学校を変えていったという点でストップ・スイサイドの役割は大きいと思います。ただ、やり方にもう少し工夫がほしいと思います」とジュネーブ州カーリュージュの高校のある教師。

情報提供の仕方は慎重に

 もう1つの専門家たちによる自殺予防対策組織、「ジュネーブ大学病院精神科、自殺予防研究センター ( CEPS ) 」の青少年自殺予防課の心理学者、マヤ・ペレ・カティポビック氏は「自殺願望は1つの病気なのです。病気なのだから恥じることはない。きちんと治療することが大切なのです」と強調する。

 ただ、エイズやタバコの予防と違うのは、自殺願望には根本原因が1つや2つではなく、20人いれば20通りの原因があるという点である。 また1つのウイルスが原因といったものでもない。「自殺願望は病気なのですが、他の病気治療、予防とは発想を根本的に変える必要があります」とカティポビック氏は説明する。

 CEPSは具体的には2つのことを行っている。1つは自殺しようとして助かった若者の治療。自殺願望は精神の危機状態の病気。危機から脱出できるようそこにまで至った経緯を分析し、精神の回路を変えてやる。また他の校友に「伝染」しないような対策も行う。

 もう1つは予防。結局自殺する本人ではなく、近しい存在、特に教師が自殺しそうな学生の態度から状況を判断し、次に周囲の人間関係、家族や友人などを確認し、この人たちを動かすようにする。つまりは「教師の教育」といういわば間接的な予防方法をとることが多いという。

 「それには、教師がCEPSのような機関があることを知ることが大切です。それを行ってくれるのがストップ・スイサイドです。情報提供を広く行い、また病気なのだからもっと予算を使うよう政治関係者を動かしている大切な組織です」ペレ・カティポビック氏。

 しかし、自殺予防の情報、宣伝の仕方はとてもデリケートな問題だ。情報を与え過ぎて反対に自殺者を増やすこともあるらしい。「情報提供のやり方は、慎重に、そして後は専門家に任せて欲しいと思います」とペレ・カティポビック氏は締めくくる。

swissinfo、 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

3年前から、世界保健機関 ( WHO ) は9月10日を「世界自殺予防デー」にしている。

WHOの統計によると、日本の2003年の15〜24歳の青少年の自殺者数は1714人 ( うち男子1158人、女子556人 )、スイスでは2002年の同年齢層の自殺者数は105人 ( うち男子77人、女子28人 )。

同じくWHOの年齢に関係なく、トータルで人口10万人に対しての自殺者数を調べた統計では、スイスは2001年47人、日本は48人であった。

2月22日に、ベルンで行われた「スイス自殺予防イニシアチブ ( IPSILON ) 」が組織した記者会見によると、スイスでは毎年1400人の自殺者のうち、橋から飛び降りた人が10.9%もいるという。主な橋はベルン、ローザンヌ、ツーク、ザンクトガレン近辺のもの。橋の柵の高さ上げれば、自殺者の数を減らすことができるのではないかという。

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