5千年前のアイスマン死因の謎、解明する
スイスとイタリアの共同チームの研究によって、氷河に眠っていた世界最古のミイラ、アイスマンこと「オッツィー」の死因が解明され、5300年前から眠る謎が解決した。
チューリヒ大学の解剖学者フランク・リューリ教授は、様々な角度からエックス線を当てるコンピュータの断層撮影、CT技術を使い、矢じりから受けた肩の動脈の傷による失血がオッツィーの死因だったと証明した。
チューリヒ大学の解剖学研究所はこの研究を「考古学科学ジャーナル ( Journal of Archaelogical Science )」誌( 電子版 ) に発表し、7月号の米と独「ナショナル・ジェオグラフィック ( National Geographic ) 」誌に発表する予定だ。
オッツィーって誰?
オッツィー ( Otzi ) は発見されたオーストリア、チロル地方のエッツ渓谷 ( Otzal ) にちなんで名付けられた世界最古5300年前のミイラだ。1991年の9月、ドイツ人のカップルがシュナル谷氷河の山稜を登山していたところ、標高3210メートル地点の溶け出した氷河から茶色い頭蓋骨の一部を発見。遭難者に違いないと通報したところ、ツタンカーメンより古い銅器時代の氷漬けのミイラだったわけだ。
解剖専門のリューリ教授は2005年に、ツタンカーメンの死因の解読チームにも顧問として関わった考古学者だ。オッツィーについて「この時代の人体がこれだけ良好な状態で保存されていたことは驚嘆すべきことで、実にまれです。オッツィーが突然死したことで、まるで5000年前の日常のスナップ写真を撮ったようです」と語る。
オッツィーの発見は銅器時代の生活に多くの光を当てた。当時の服や羊革のパンツ、熊皮の帽子、毛皮のついたスリッパなどを履いたまま発見されたからだ。ポケットにはトイレットペーパーの代わりに使用されていたコケや刃物や箙 ( えびら ) など多くの持ち物が共に冷凍保存されていた。
アイスマン解凍の解答
リューリ教授はオッツィーの死因について「矢先が肩甲骨に入り鎖骨まで突き刺さっていた。矢先は動脈に当たった損傷が見られる。CT映像では大きな血腫が見られ、多く失血したことを物語る」と分析。リューリ氏はオッツィーは矢を受けてから間もなく死亡したと推定した。しかし、矢を受けたのが狩の事故か、部族間の争いかは、まだ分からない。
今後はオッツィーの死の状況とミイラの腐敗段階について研究が行われる。
swissinfo、イゾベル・レイボルド・ジョンソン 屋山 明乃 ( ややま あけの )意訳
– チューリヒ大学の解剖学研究所は10年来「スイスミイラプロジェクト」を行っている
– チューリヒ大学の解剖学研究所は10年来「スイスミイラプロジェクト」を行っている
– スイスミイラプロジェクトはミイラの死因、死後の変化など歴史的に貴重なミイラを分析する。
– チューリヒ大学のフランク・リューリ教授は、アイスマンが展示されているイタリアのボルザノ考古学博物館とボルザノ病院と共同で研究を行った。
– スイスミイラプロジェクトはミイラの死因、死後の変化など歴史的に貴重なミイラを分析する。
– チューリヒ大学のフランク・リューリ教授は、アイスマンが展示されているイタリアのボルザノ考古学博物館とボルザノ病院と共同で研究を行った。
– オッツィーは1991年、オーストリアとイタリア国境近くの氷河で登山者により、標高3210メートル地点で発見された。
– およそ46歳で死亡し、身長は1メートル60センチ、体重は40キロと推定される。
– オッツィーは関節炎を患い、腸には寄生虫がいた。
– 発見時には肩に矢が刺さっていた。
オッツィーに関しては、その発見に関わった人間の不遇の死がツタンカーメンならずして「オッツィーの呪い」として近年、ヨーロッパメディアに取り上げられた。
これは2004年、オッツィーの発見者、ヘルムット・サイモン氏 ( 66歳 ) が登山中に発見現場に近い場所で事故死して以来、騒がれ始めた。
オッツィーのミイラを始めて検査した考古学者、コンラート・シュピンドラー氏 ( 55歳 ) が硬化症で亡くなり、ミイラを素手で扱った法医学者のライナー・ヘン氏 ( 64歳 ) が交通事故でそれに続いた。
そのヘン氏をオッツィーの眠る場所に導いた登山ガイド、クルト・フリッツ氏 ( 52歳 ) がその後、雪崩れ事故で死亡。また、オッツィーを氷から取り出すヘン氏のドキュメンタリーを撮影したジャーナリストのライナー・ヘツル氏 ( 47歳 ) は脳腫瘍で死亡した。
そして「次は自分だ」と笑っていたオーストリアの考古学者、トム・ロイ氏 ( 63歳 ) も自宅で亡くなっていたのが死後、数日してから発見された。 ( 2005年12月30日付の仏ル・モンド紙 )
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