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アルプスのトラック輸送問題、スモッグの中で沈滞

スイスを縦断するのに、トラックをそのまま鉄道に載せるスイスの輸送方法 Keystone

スイス国民は1994年、スイスを縦断する貨物のトラック輸送を鉄道輸送に切り替える案に賛成した。

政府はその実施年を2009年と定めたが、最近延期案を出すなど消極的で環境保護団体から非難を受けている。

 1994年の国民投票でスイス国民は、「増加するトラックでの貨物輸送からアルプスの環境を守るイニシアチブ」に賛成した。その結果連邦議会はスイスを縦断するトラックの数を1年間に65万台に制限することなどを含む、改正案の実施を2009年と決定した。一方で政府は、レッチュベルクトンネルの開通などに巨額の投資を行い、アルプスを通過する鉄道のインフラを充実させたきた。にもかかわらず、道路を使うトッラク輸送は、昨年の上半期だけでも9%の増加を示した。

トッラク輸送改正案実現の延期

 最近、連邦政府と議会はアルプスを通過できるトラックの制限台数を増やしたり、トラック輸送の改正案の実施を2009年から数年延期させようといった計画を提案し、改正案実施に消極的になっている。

 しかし、グリーンピース ( Geanpeace ) や「ワールド・ワイド・ファンド・フォー・ネイチャー ( World Wide Fund for Nature ) 」などのNGOと共に1994年のイニシアチブを提案したNGO「アルプスのイニシアチブ ( Alpine Initiative ) 」は、改正案の実施延期をしなくてはならない理由は見あたらないと言う。

 NGOが繰り返し提案しているシステムは、「アルパイン・クロッシング・エクスチェンジ ( Alpine Crossing Exchange ) 」と呼ばれるもので、1年間にアルプスのさまざまな道路を通過できる最大回数を、権利として各輸送会社に割り当てるシステムである。このシステムは欧州諸国も輸送が集中する地域には最適なシステムと評価し、スイス政府も実現可能としている。

スイスの独立性

 だが一方で、NGOもスイス政府の改正案の実施延期は現実的に仕方のないこかもしれないという見方を強めている。

 「もし政府が欧州連合 ( EU ) の支持を待たず、今すぐ行動を起こしたとしても、改正案が実施されるのは2010年になるだろう。それは改正案が規定する道路輸送から鉄道輸送への切り替えが、2012年になることを意味する」
 とスイスのグリンピースの代表、カスパー・シューラー氏は分析する。

 スイスの道路輸送協会「アスタク ( Astag ) 」のアンドレ・キルヒホッファー氏は、
「たとえ2017年にまで延期されたとしても、この改定案は非現実的だと思う。また改正案が提案するアルプスを通過するトラックの制限数65万台にしても、イタリアとの重要な貿易を抑圧する数だ」
 と批判する。

 いずれにせよ、欧州連合 ( EU ) 諸国は独自にトラック輸送の改正案を決定できるスイスの独立性をうらやましく思っている。例えばオーストリアのブレナー峠 ( Brenner Pass ) では、昨年だけで200万台のトラックが通過し、それは2006年より5%の増加だという。

swissinfo、デイル・ベヒテル 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

1987年に創立されたNGO。およそ5万人のメンバーと支持者からなる。

増加するトラックでの貨物輸送から環境を守ることを目的とする。

1994年、スイス国民はこのNGOのイニシアチブに国民投票で賛成を表明した。

その結果、連邦政府と議会はスイスを縦断する大型トラックに走行距離に従って課税したり、トラックの最大重量を28トンから40トンに引き上げること、スイスを縦断するトラックを鉄道に載せる輸送会社には助成金を与えることなどを決めた。

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