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カーシェアリング

モビリティの車で移動する方が自家用車を持つより経済的 Keystone

自家用車を持たず、カーシェアリングをする人がスイスでは増加している。スイスの「モビリティ ( Mobility )」はヨーロッパで最大の規模を誇るカーシェアリングの協同組合で、今年で創業10年になる。

柔軟性があり、環境意識が高いユーザー7万1300人の会員が現在、モビリティの車1850台をシェアーしている。コストは自家用車を持った場合よりも断然安いのが人気の原因だ。

 モビリティは使いたいときに手軽に使えるカーシェアリング。「運転手のいないタクシー」といったところ。ユーザーの一人、オスカー・フォン・アルブさんは「1850台もの車の所有者」だ。しかも、洗車の必要もないし、自動車保険に加入する必要もない。車検もタイヤ交換もまったく考える必要がないのが特徴だという。

節約意識を環境保護に転換

 フォン・アルブさんはそう語りながら、ベルンの駅にある駐車場に小型車「スマート ( Smart ) 」を駐車した。今回の走行距離は自宅から街の中心地まで往復で10キロメートル。「持っていた自家用車が壊れたのをきっかけに、2000年からモビリティの会員になった。安上がりだし、実際、あまり車に乗りたくなかったので」と言う。近くまでタバコを車で買いに行ったり、といった意味のない自動車利用はもう止めたかったとも。車はいまでも運転するが「本当に車が必要かとまず考える」とカーシェアリングをするようになって、経費節約を意識しているという。

 「環境保護は重要な問題。だからこそ、環境に対する意識が高くない人は、生活費節約の観点から見れば環境にも貢献できるのではないか。人間中心的な観点からスタートすれば、環境保護に伴う負担をあまり感じることもない」とフォン・アルブさん。以前は年間1万〜1万2000キロメートル走ったが、現在はその4分の1。それでも、移動が制限されたとは感じていないという。モビリティの車は町のあらゆるところに駐車されているからだ。唯一不便だと思うのは、スタートした場所に車を戻すことくらいだという。

公共交通機関との組み合わせ

 モビリティのカール・ホイジ社長は「ネットワークが非常に密であるスイスの公共交通機関と組み合わせることでカーシェアリングのよさが発揮できる」と説明する。実際、スイス連邦鉄道全路線に適用される1年定期券 ( GA/AG ) を所有する人が会員になる場合が多い。電車とモビリティを組み合わせて移動するのが効率的だからだ。しっかり整備されている公共交通機関網を補うのが車。こうしたコンセプトの上にあることが、モビリティの成功の秘訣だという。
 
 カーシェアリングによる環境保護の貢献度は数字にもはっきりと現れる。連邦エネルギー局が昨年発表した調査では2005年、のモビリティの会員は二酸化炭素排出量の削減に1人当たり200キログラム貢献したという。

節約には一番

 ホイジ氏によると「モビリティは柔軟性を第一としている。自家用車はいつも同じ場所に駐車されているが、モビリティの車の駐車場は全国に1000カ所もある」。利用時間で料金が設定されていることも、ユーザーにとって魅力の1つだ。「自家用車は利用されず駐車場に置かれたままでも、維持費は同じくかかる」とホイジ氏。

 昨年1年で会員は10%増加したが、モビリティを知らない国民もいまだ多く、将来の可能性は大きく広がっているとホイジ氏は見る。都市ではモビリティの車の駐車場網は充実しているが、地方ではまだ不十分。インターネットや電話による予約制度も見直しが必要だ。「必要だと思ったときにすぐ利用し、返却の時間にも縛られないのが理想」とホイジ氏は将来のカーシェアリングを語る。

 前出の会員、フォン・アルブさんは「モビリティは節制でもある。車を運転するのだという認識と責任感を持つようになるから」と彼なりの哲学を語った。

swissinfo、レナト・キュンツィ 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳

モビリティはヨーロッパ最大のカーシェアリングの協同組合
会員数7万1300人、所有自動車台数1850台、駐車場数1000カ所
個人会員と企業会員がある。
会員になるためには、個人の場合入会費1000フラン ( 約10万円 ) を支払う。脱会の際には払い戻しがある。
年会費は連邦鉄道の定期所有者は190フラン ( 約1万9000円 ) 。チューリヒの路面電車の定期所有者は25フランなど、公共交通機関を頻繁に利用する人には特権がある。
1時間の使用料金はスマート ( 小型車 ) は日中2.70フラン ( 約270円) 、夜間0.60フラン ( 約60円 ) 。ベンツの小型バンは日中4.20フラン ( 約420円 ) 、夜間0.60フラン ( 約60円 ) 。
走行距離100キロメートルまで、スマートは1キロメートルにつき0.52フラン ( 約52円) 、101キロメートル以上は0.26フラン ( 約26円 ) 。ベンツの小型バンは100キロメートルまで0.90フラン ( 約90円 ) 、101キロメートル以上は0.45フラン ( 約450円 ) 。

二酸化炭素排出規制
モビリティと「二酸化炭素課税基金 ( Klimarappen ) 」は共同で、二酸化炭素排出規制プロジェクトを行っている。2012年までにモビリティの会員をこれまでより5万人以上増やすことを目指す。利用者が10万人になれば、スイス全体で二酸化炭素排出抑制量は1万9000トンになる換算だ。

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