スイスチョコレートの美味しさの秘密
スイスといえばチョコレート。「スイスチョコレート」が何故美味しいのか、どうやって世界的に有名になったのか?チューリヒ近郊のキルシュバーグにあるリントチョコレート工場を訪問しながら、謎に迫る。
スイスチョコレートの美味しさの秘訣は「長い伝統と独自の発明に品質の良さを追求すること」とスイスチョコレート協会、ショコスイスの理事のフランツ・シュミッドさんが説明する。
チョコレートの元祖
チョコレートの起源を遡れば古代メキシコのアステカ人がショコラトール(ほろ苦いの意)と呼び、飲んでいたという説が一般的。その後、スペインが南米を征服した際にヨーロッパにもたらされ、1615年にルイ13世の后に迎えられたスペイン王女、アンヌ・ドートリッシュがフランス宮廷に飲むチョコレートを流行させたのがきっかけで定着した。
スイスなくしてチョコ菓子はなし
19世紀のヨーロッパでは飲むチョコレート以外に固形のものも存在するが、硬く、ザラザラして苦かった。これにカカオバターを入れて口の中で溶けるチョコレートを発明したのがリントチョコレートの元祖ルドルフ・リントだった。薬剤師だった兄がチョコレート中に含まれている水分が砂糖と混ざる際の結晶化がザラザラになる原因だと指摘した。ルドルフはチョコレートを構成するカカオマス(カカオ豆を潰したもの)とカカオバターと砂糖を混ぜる機械、「コンシャージュ」機を1879年に発明し、口触りのいい、溶けるチョコレートを造った。これが現在、市場で買えるチョコレート菓子の元祖となる。ルドルフはある週末の晩、試行錯誤に疲れて機械を消し忘れて帰宅し、月曜日に戻ったときにトロッとした「ショコラフォンダン」(溶けるチョコレート)ができていたという逸話をリント工場のシルビア・カリンさんが語る。以前は72時間もかかったこのコンシャージュは現在の技術では4時間に縮小した。コンシャージュの後、15マイクロメーターほどの小さな粒に出来上がって、口触りのいい、ザラザラの残らない美味しいチョコのもとになる。この機械の性能の良さがスイスチョコの美味しさの秘訣ともいえる。
スイスの発明のもう一つはミルクチョコレート。これも、スイス人のダニエル・ピーターが粉になったミルクを混ぜることで成功する。スイスのミルクチョコレートの美味しさは美味しいミルクにあるとも言われる。
美味しいチョコの見分け方
美味しいチョコレートの見分け方は「第一に、表面がピカッとして光っていること。第二に、割ったときにパリッと音がすること。(注;ミルクチョコレートは音がしない)第三に、香りが良くて、口の中でとろけること」が大事だとリントのチョコレート職人が説明する。リント工場には6人の専門家テースターがおり、一日2回、新製品などの味見をするが、ソムリエのように口に含んでから吐き出す。チョコレートテースターはソムリエのように専門学校に通い、勉強をするが「2年間、毎日チョコレートを食べていないとなかなか味の違いが分かるようにならない」という。
アルプスの国、スイスチョコは融けやすい ?
今年の欧州連合(EU)の新法ではチョコレートの成分にカカオバター以外の植物性油を5%までなら混ぜてもよいことになった。「スイスでもこの法律は1995年以来存在しているが、現在はこれを実施しているスイス製造者はいない」とスイスチョコレート協会のシュミッド氏が語る。「植物油を入れるとチョコが溶けにくくなるので暑い国への輸出用に製造している国もあるが、スイスは品質で勝負している」という。つまり、スイスの本場のチョコは溶けやすいわけだ。
チョコ消費量世界一のスイス人
スイスのチョコレート消費量は世界一で年間11,9キロも消費するという。(2002年スイスチョコレート協会統計)これには、スイスでチョコレートを購入する観光客も入っているが、いかにチョコレートが生活習慣に溶け込んでいるかを示す。これを裏付けるのようにスイスではチョコレートの国内消費の方が海外輸出より年間で4トン多い。消費量がスイスの次に多いのはドイツ10,1キロ、3位はオーストリアの9,6キロで日本は16位の2,2キロに当る。また、スイスチョコレートの主な輸出先はドイツ13%、英国12%、フランス11%で日本は13位で2%弱にあたる。
スイス国際放送、A.Y.
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