セロノ、メルクの手に
バイオテクノロジーの大手セロノ ( Serono SA ) の最高経営責任者 ( CEO ) で、最大株主でもあるエルネスト・ベルタレリ氏は、彼が所有するセロノ株をドイツの大手医薬品会社メルク ( Merk KGaA ) に売却すると発表した。
新会社の名前はメルク−セロノバイオ製薬社 ( Merk-Serono Biopharmaceuticals ) 。本社はこれまで通りジュネーブに留まることになる。ベルタレリ氏の今後は現在のところ不明。
メルクはセロノの株1株につき1100フラン( 約10万円 ) で、同社に64.5%の資本参加を行い、発言権の75.5%を得ることになる。
売却か買収か
これまでセロノが販売してきた医薬品は、新会社が引き続き製造販売する予定。新会社の売上は122億フラン( 1兆1436億円 ) になる見込みで、このうち57億フラン ( 約5343億円 ) はバイオテクノロジー分野の売上になる。
ベルタレリCEOの声明によると、新会社メルク−セロノバイオ製薬は、癌治療、抗体の弱化による病気治療、炎症治療薬などの開発販売が専門となるという。また、メルクの中で、引き続きバイオテクノロジーの中心的役割を果たすという。
昨年からセロノは身売りを計画していたものの、今年春になって、売却相手が見つからず戦略を変更。7月に開催された上半期の業績発表の場では、他社を買収することで事業を拡大していきたいとの意向で、候補の企業とは交渉中だと発表した。4月には増資を行い、上半期末時点で18億フラン ( 約1687億円 ) 流動資産があり、買収には100億フラン ( 約9373億円 ) の資金があると見込まれていただけに、今回の身売り決定は予想外だといわれている。
メルクとしては
メルクのミヒャエル・レーマー最高経営責任者 ( CEO ) は「今回の買収によりバイオテクノロジー部門を先取りするような企業になるだろう。これは同族会社のメルクの将来を確実なものにする」と発表した。
買収資金は、流動資産と20億〜25億ユーロ (約2975億〜3719億円 ) の増資により調達されるという。このうち、10億ユーロ ( 約1487億円 ) は、メルク一族が出資する。買収は来年初頭に完了される予定。
swissinfo 外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
メルクがセロノ株の64.5%を買収
1株につき1100フラン
メルクの発言権は75.5%
セロノはバイオテクノロジー分野で世界第3位、ヨーロッパ第1位の製薬大手。
不妊症、神経系疾患、代謝・成長不振分野などが専門。
日本を含め世界90カ国で製品を販売している。
従業員 4900人
昨年からCEOの所有する株の売却が噂されていた。
ベルタレリCEOはアリンギ・チームのオーナーで、彼のチームが2003年、アメリカズ杯で優勝したことでも有名になった。
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