タトゥやボディ・ピアスに規制導入
手軽なファッションとしてスイスでも市民権を持ち始めたタトゥ(入れ墨)やボディ・ピアス。今まで野放し状態だったこの商売にやっと規制が入り始めた。一歩間違えば、ばい菌が入って生死にも関わるかもしれないのだ。
タトゥをすれば、簡単に「ちょっといかした感じ」を手に入れられる。米国の人気ラップ歌手などを真似してスイスの若者の間に空前の人気だ。
タトゥやボディ・ピアスは確かにちょっと格好よく見えるかもしれない。けれども侮るなかれ。欧州委員会が2003年に発表した報告によると、やはりドリルで身体に穴を開けるのはちっとも安全なことではないのだ。一歩間違えば恐ろしい痛みに悩まされることになる。
2003年には半数が病院にかけこみ、2人が死亡
同報告書によると、2003年にボディ・ピアスをした人のなんと半数はかなりひどい感染症で病院の治療が必要となり、その内の2人は死亡した。
また、タトゥについても、身体に傷を付けて色を入れることによる化学反応や毒性についてまだ分かっていないことが多く、報告書は「多くの場合、車の塗装に使われているような物質が肌の中に注入されている」と警告した。
スイスもメンバーである欧州評議会では、この報告書に基づき、眉などを永久に入れる美容外科を含む全てのタトゥについてなんらかの規制を設けることを決定した。当然、この規制が発効されればスイス国内でも適用される。
連邦保険局はこれまで、タトゥ産業と手を組んで安全ガイドラインなどを作成してきたが、国全体としての法的な規制はなく、対応はそれぞれの州政府に任されていた。
ほとんどのタトゥ・スタジオは衛生面で無法状態
タトゥやピアスに使われる道具や素材についても、毒性の強い染料を使わないことや、道具や容器は衛生的に保つこと、などがガイドラインに書かれているだけだった。しかし、今後はかなり厳密な殺菌消毒が求められる。
カラー・コンタクトレンズに対しても厳しい規制が適用される。生産者や輸入業者は、その製品が国の規制に見合った商品がどうか届け出ることが義務づけられる。
スイス・プロフェッショナル・タトゥ協会は、今回の規制導入に好意的だ。協会の副会長、ルック・グロセンバッハー氏は語る。「多くのタトゥ・スタジオは最低の衛生設備さえも設けていない、無法状態ですからね」
しかも、グロセンバッハー氏は、「今回の規制に応じた設備をそろえようと思うのは、スイス国内のタトゥ・スタジオのうち、4分の1ぐらいではないでしょうか」と言う。しかし、この規制に違反すれば、罰金はかなり重い。
今後は毒性のない染料を作ります
規制が発効するのは2007年12月21日。タトゥ産業には約2年の準備期間がある。欧州でタトゥ染料を製造する最大手、T.I.M.E.は「この間に毒性のない染料を開発し、衛生的な容器なども生産するつもりです」と発表した。
連邦保険局の職員で、今回の欧州委員会の報告書作成にも参加したミシェル・ドナ氏は、スイスインフォの取材に対し、「2年後、タトゥ・スタジオにはかなり頻繁に検査が入ります。使われている染料も州のラボに送られて原料は何かということをしっかり調査されます」と力をこめた。
「タトゥに使われる染料が輸入される際には、関税局も当然、規制に照らし合わせて厳しくチェックします」
ドナ氏は現在、タトゥやピアスを施す業者に対し、ライセンス制を導入するよう、州政府に働きかけている。
今回の規制は、一部のタトゥ業者には不評だが、これが顧客の命を守るものだと思えば安いもののはずだ。
swissinfo、ジュリー・ハント 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳
先進国では10〜15%もの人々が身体にタトゥを入れている。
スイスでタトゥを入れる費用は1時間で150〜250フラン(約1万4000〜1万8000円)。
現在、タトゥを入れるのに技術免許や規制はない。
スイス・プロフェッショナル・タトゥ協会に登録しているのは、全国にある350店のうち、22店に過ぎない。
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