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建設ブームの終焉

専門家は、近々不動産市場がやや冷却すると予測している Ex-press

アメリカとは違い、スイスの不動産市場は安定しており、抵当貸付でも全体的に問題はほとんどない。しかし、専門家は建設ブームの間もない終わりを予測している。

「不動産パーティ」が近々終わりを告げそうだとはいえ、市場の崩壊はなく、過熱現象がいくらか修正されるだけにとどまりそうだ。

 アメリカと違って、スイスでは不動産バブルも住宅ローンも大きな問題にはなっていない。だが、この10年間続いた不動産の好況はそろそろ終わりに近づいている。抵当貸付市場の成長は、これから当分の間、緩やかになりそうだ。

銀行の鉄則:自己資本率20%

 1980年代にはスイスにも不動産危機が訪れた。当時の最も極端な例は、1990年代初めに起こった「トゥーン貯蓄貸付銀行 ( Spar- und Leihkasse Thun ) 」の倒産だ。預金者たちは窓口に行列を作ったが、預金はもう戻ってこなかった。1991年から1996年までの間にスイスの銀行が国内貸付業務で膨らませた損害は、420億フラン ( 約4兆850億円 ) に上る。

 このときの不動産危機から、スイスの銀行は国内市場に非常に適合した教訓を得た。今日では、銀行の鉄則として、不動産の購入者や所有者に20%の自己資本の確保が要求されている。

 この鉄則に対する例外はほとんどない。アメリカと違い、債務者に対しては慎重な審査が行われるのが常だ。

 それでも、資産センター ( VZ ) で抵当貸付部門を率いるロレンツ・ハイム氏は、
「銀行同士の激しい競争によって、『安全領域』からはみ出した銀行もある」
 と言う。中には自分の資力以上のローンを融資している銀行もあるのだ。

知己の顧客にはお金を出す

 そのような傾向は小規模の地方銀行によく見られる。これらの銀行は、大銀行に比べて顧客とより懇意にしていることが多いとハイム氏は説明する。
「しかし、これはメリットではなくむしろデメリット。仕事の付き合い以上のものがあると、それが故に顧客は無理を通しやすくなるからです」

 住宅所有者協会 ( HEV ) のアンスガール・クミュール経営管理部長もこのような見方にほぼ同意する。だが、大銀行も不動産の価値を高く評価しすぎているため、「ほぼ100%融資」も同然だと指摘する。

 スイスの住宅ローン金利がこのまま上がれば、借り入れができなくなる人も出てくるはず。クミュール氏は、国立銀行が節度を保って金利の引き上げを見合わせるよう願っている。

価格の暴落はなし

 10年間続いたスイスの不動産好況は徐々に、そして確実に終焉( えん )に近づいている。だが、不動産価格の暴落はなさそうだ。2006年秋以来、建設の申請が減少していることから、新築アパートの売り出しは2007年が当面のピークだったと思われる。

 クミュール氏は
「スイス不動産市場の真価が問われるのは2008年の後半」
 と予測する。この頃には市場が冷却し、状況は景気に大きく左右されるとみる。
「景気が大幅に落ち込めば、購買力のある外国からの移住者の数も減少します。優秀な外国人被雇用者は、住宅市場の高額物件に対する需要を強力に活性化した重要な人々なのです」

 1998年以来、スイスの住居費は上がる一方だ。
「この数年、立地条件の良い所では価格が大幅に上昇しています」
 と前出のハイム氏も言う。景気停滞によって、この価格がこの先5~10%下がる可能性も十分ある。

 しかし、これはあくまでも修正に過ぎない。不動産価格は過去数年間で50%も上昇しているのだ。それでも「不動産パーティはもう終わり」と、クミュール氏は宣言する。
「過熱の修正は不健康ではありません。立地条件の良い所は今でもすごい人気です。しかし、一戸建てはすでに需要が減ってきていますね」

 長期的は視野では、国民の収入が減少する恐れがなく小世帯が増えていることからも、住居は引き続き需要超過となる見込みだ。産業用建築物や大規模建築も含むスイスの抵当貸付市場は2007年、約3%成長した。

swissinfo、アレックサ・クレメンツ・ベルガー、SDA ( 外電 ) 小山千早 ( こやま ちはや ) 訳

スイスで家やマンションを所有している人は全体のわずか35%に過ぎない。

住宅所有者協会 ( HEV ) によると、不動産投資は総額1兆9500億フラン ( 約190兆円 ) に上る。

うち3分の1の6500億フラン ( 約63兆円 ) が第三者の融資、つまり住宅ローンだ。

これを住民1人当たりに換算すると、スイス人は世界一高い負債額を抱えていることになる。

その背景にあるのは納税方法だ。スイスでは住宅を所有している場合、その住宅を賃貸したとして得られる収入を想定し、その金額に対して課税される。

この仮想賃貸料は税申告の際、控除の対象となるため、銀行からお金を借りて不動産を購入した人はその負債を減らそうとしない。

住宅所有者協会によると、住宅ローン業務における銀行の金利マージンは現在およそ2.5% ( 預金口座の金利との差は約0.5%、クレジット金利との差は3.5% ) 。

住宅ローンビジネスの3分の1は24ある州銀行が行っている。残りはUBSが約20%、「ライフアイゼンバンク ( Raiffeisenbank ) 」 が約14%、クレディスイス ( CS ) が13%。そして、およそ8%が「ミグロバンク ( Migrosbank ) 」や郵便局 ( PostFinance ) など ( 2006年のクレディスイス調査による ) 。

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