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金融危機 資産の移動

毎月何千もの新設口座が設けられるという、チューリヒ州銀行 Keystone

金融危機で、資産をスイスの大手ユニバーサル銀行から個人投資家向け銀行に移す人が急増している。

スイスのすべての銀行は、経営破綻した場合でも預金者に最低3万フラン ( 約290万円 ) の即時返還を保証する預金保険制度を定めているが、多くの預金者に資産を分け、さまざまな銀行に預金するよう勧めている。

個人投資家向け銀行

 スイス政府は、スイスの銀行が経営破綻する可能性はほとんど無いというが、国外の相次ぐ銀行倒産に国民は不安感を高めている。

 およそ1700人のスイス人が高い金利をあてこんで、アイスランドの「コウプティング・エッジ ( Kaupting Edge ) 」にオンライン預金したが、アイスランドの銀行国有化に伴い、預金が返還されるかどうか懸念している例も出てきている。

 こうした中、大手スーパーマーケット「ミグロ ( Migros ) 」と「コープ ( Coop ) 」が経営する2つの銀行では、口座を新設する人が後を絶たないという。

 また、州銀行とスイス郵便が経営する「ポストファイナンス ( Postfinance ) 」は預金者に100%の返還保証をしており、
「最近の統計がないので、はっきりとした数は出せないが、10万5000人が今年の1月から6月の間に口座を新設した。これは前年同期の8万人よりかなり多い」
 とポストファイナンスの代表者は語った。一方、チューリ州銀行も、毎月何千もの新設口座が設けられると話した。

 「ライフアイゼン ( Raiffeisen ) 」銀行では、全国の支社をトータルするとおよそ600の新口座が毎日のように開設され、毎月の預金額が10億フラン ( 約900億円 ) になるという。ライフアイゼンの100年を超える歴史の中で、クライアントは一度も痛手を負ったことがないというのが、同銀行のホームページのキャッチフレーズ。
「多くの人がビッグバンクに信頼を失っている。その結果うちの銀行や、そのほかの小型銀行に資産を移している」
 と、ライフアイゼン銀行のスポークスマンは分析する。

 スイス最大銀「UBS」と大手「クレディ・スイス ( Credit Suisse ) 」は、数週間後に発表される第3四半期の結果が出るまでは、口をつぐんだままだ。
「預けている資産が金融危機で心配になり、その一部をほかの銀行に預けるといった手段を講じたクラインアントもいる」
 とUBSのスポークスマン、アンドレアス・ケルン氏は語った。

預金保険制度の改正も資本注入もない

 スイス銀行家協会は、慎重にスイスの銀行の健全さを語る。UBS は490億フラン( 約4兆4000億円 ) をサブプラム問題で失ったとされ、これはヨーロッパの銀行中で最大の損失額だといわれる。しかし、専門家によるとUBSは経営破綻を回避しようと、適切な時期に適切な手段を講じたという。

 「スイスの銀行はどれ一つも倒産することはないと確信している。スイスのバンキングシステムは非常にうまく機能している」
 と、スイス銀行家協会のピエール・ミラボー会長は、日曜新聞インタビューで述べている。

 連邦財務省(EFD/DFF)はスイスインフォに対し、最低3万フラン ( 約290万円 ) の預金保険制度を改正する意向はないと語り、また他国が行なっている銀行への資本注入などの対策を行なう必要性は感じていないとも明言した。 

swissinfo、マシュー・アレン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

10月12日付けの、ドイツ語圏の日曜紙「ゾンタークス・ブリック ( SontagsBlick ) 」とフランス語圏の日刊紙「ル・タン ( Le Temps )」の日曜版が行った調査によれば、スイス国民は金融危機をさほど心配していないことが分かった。

アンケートに応じた5人に4人が、銀行倒産や資産の危険を心配していないと答えている。

金融危機に端を発する結果に関しては、16%の人が多少心配しており、僅か1%の人が非常に怖いことだと語った。他方、4%の人がまったく関心が無いと答えている。

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