スイス・ベルン州のミューレベルク原発即時稼動停止を求める住民発議(イニシアチブ)が州民投票で18日、63.3%の反対で否決された。この発議は福島原発事故にショックを受けたベルン市民が立ち上げたものだった。否決の結果、世界で最も古い原発の一つに数えられる同原発は、原発運営会社BKWが約束しているとおり、即停止ではないが2019年に停止される予定だ。
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ベルン州民の署名1万5千筆を集めて成立した画期的な住民発議は、次のように訴えていた。「(ミューレベルク原発運営会社の)BKWの大株主であるベルン州は、ミューレベルク原発の即時停止に努めること」
これは、フランチスカ・へレンさん(47)とヴァルター・クマーさん(53)という、政治とはそれまで全く縁のなかった2人が立ち上げたもの。2人は福島第一原発事故の被害の大きさに動かされ住民発議を思いついた。
ミューレベルク原発は稼働開始から44年が経過しており、世界で最も古い原発の一つに数えられ、また福島第一原発と同じ型で、シュラウド(炉心隔壁)の亀裂、冷却装置や地震対策の不備に加え、洪水の危険性なども挙げられている。
そのため、この発議以外にも稼働停止を求める運動が繰り広げられた。そこで、同発議が成立した2012年以降に、BKWは2019年で「経済的理由から」稼働を停止すると約束した。
今回、この発議案を否決するよう住民に呼びかけていたベルン州政府および州議会は、投票結果に満足しながら「州民は、2019年までは、調整された方法で次第に原発を停止する方向を選んだ」とスイス通信に対し話している。
一方、原発反対派のグリーンピースは「ベルン政府が発した、即時稼働停止は数百万フランの損害賠償請求になる可能性を伝えたメッセージが功を奏してしまった」と語った。
しかし、これでベルンの州民はスイス政府が掲げる自然エネルギーへの移行について考える契機を得たのだから、(グリーンピースとしては)悲観的ではないとした。それには、ヌーシャテルの州民投票で風力発電の推進が可決されたことなどもあるという。
ミューレベルク原発についての投票率は高く、51.6%だった。
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一般市民2人が原発を止めようとするとき
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日本の原発事故、2人の市民、怒り、実現されたアイデア、住民投票。これは、ミューレベルク原発の即時稼動停止を求めて立ち上がったフランチスカ・ヘレンさんとヴァルター・クマーさんの物語だ。彼らが立ち上げた住民発議(イニシアチブ)は18日、ベルン州の住民投票で是非が問われる。
きっかけは、数千キロも離れたところで起きた出来事だった。2011年3月11日、大規模な津波が福島第一原発で炉心溶解を引き起こした。放射性物質が原発敷地外に放出され、同原発20キロ圏内の住民は避難を余儀なくされた。
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原発の安全性 スイス最高裁、住民の異議申し立て認める
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ミューレベルク原発の安全対策を十分とした連邦核安全監督局(日本の原子力規制委員会に相当)の判断は誤っているとして、同原発の近隣住民2人が異議申し立てを行っていた件で、スイス最高裁判所は11日、原告側の主張を認める判決を下した。原発の近隣住民は今後、原発の安全対策に関して行政側に見直しを要求できるようになる。
今回の裁判の背景には、連邦核安全監督局が2011年3月、福島第1原発事故を受け、スイスの全原発5基に対し、地震および洪水時の対策計画をすぐに見直すよう指示したことがある。同局はその際、アーレ川から冷却水を取水するミューレベルク原発に対し、1万年に1度の確率で起こるアーレ川の大洪水に備えた保全計画書を提出するよう求めた。
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ミューレベルク原発、2019年に稼働停止決定
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電力会社BKWは30日、ミューレベルク原発を2019年をもって稼働停止すると発表した。長期的に運営するのは、今後の政治、経済、安全基準のゆくえが不透明なことから採算が合わないと判断した。稼働停止までの6年間は、欠陥箇所の補強を続ける一方、水力や風力発電などへの投資を増やしていく方針だ。
福島第一原発と同型で、同年代に建設されたミューレベルク原発は、今年で稼働開始から41年。これまで多くの欠陥が指摘されてきたが、今年3月の最高裁判決で無期限稼働が認められたことを受け、BKWは同原発を2026年までは稼働させる予定だった。
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スイス政府、脱原発の約束を守り新エネルギー戦略発表
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福島原発事故を受けスイス政府は昨年5月、「段階的脱原発」を宣言。その後連邦議会からの支持を得て、脱原発を具体的に進めるエネルギー基本方針「エネルギー戦略2050」の第1案を9月末に発表した。法改正案を柱とするこの戦略では、特に太陽光発電を推進。2050年にはこのエネルギーだけで現在の原発の発電量(39%)がほぼ賄えると計算する。
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