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ブライトホルンに挑戦 車椅子の日本人2人

内田さんと井出さん
内田さんと井出さん、ブライトホルン登頂の前に Yumi von Reding/swissinfo.ch

スイスアルプスの1つ、ブライトホルン(標高4164メートル )の山頂に、車椅子で生活している内田清司さん(44歳 )と井出今日我さん (16歳 )が挑戦する。

山海嘉之・筑波大学教授の研究室で開発された「ロボットスーツHAL ( Hybrit Asistive Limb )」を着用した理学療法士の松本武士さんが内田さんを背負う。井出さんはそりで登る。障害者と健常者が力を合わせ、困難な課題を達成したいという登山隊の隊員たちの夢をスイスのツェルマットでかなえようとしている。

ブライトホルンはスイスとイタリアの国境に位置する。標高3820メートルのクライン・マッターホルンまでロープウエーが通っており、登山愛好家にとっては、登頂は比較的簡単な山といわれている。しかし、雪に覆われピッケルやアイゼン、ロープなどが必要で、高山病にかかる恐れもある。

ロボットスーツHAL

暑さが続いたスイスだが、登山家の野口健さんを隊長とする一行がツェルマットに着いた翌日から天候が崩れた。8月5日から7日のうちで、天気がもっとも良い日に決行するという。

一行は、ヴァレー(ヴァリス)州南部にあるツェルマットを朝7時に出発の予定。ここからクライン・マッターホルンまでは、ロープウエーで登る。ここで、松本さんがHALを着用し、内田さんを背負って登る。再びクライン・マッターホルンに戻ってくるのは午後4時ころ。

内田さんを背負う松本さんが着用した「ロボットスーツHAL」は、SFの世界に登場しそうな「夢のマシーン」。人が筋肉を動かす際、脳から末梢神経に電気信号が流れるが、それによって生じる皮膚表面の電位差をセンサーで読み取り、着用している人の身体機能を向上させることができる。昨年の愛知万博でも紹介され、障害者の補助に応用できると期待されている。今回、登山用に、低温でもバッテリーが動くようにしたり、人を乗せるための背負子を付けるなど改良された。

HALを着用すると「荷物を持ったり背負ったりしても重さはまったく感じません」と山海教授は説明する。松本さんは「背負子のベルトが肩に食い込むし、ひざにも負担
です」と、調整に大変そうだ。 (ただし、ブライトホルン登山後、このコメントは否定された)

2人の抱負

内田さんは大学生だった1983年に交通事故に遭い、頸椎(けいつい)を損傷し四肢に麻痺が残ってしまった。人生の目標を見出せずにいた時に見た写真が、ツェルマットだったという。8年前にツェルマットを訪れたが、登山はできなかった。今回再びツェルマットを訪れ、ブライトホルンに登ることになるのは「夢の中で夢を見るような気持ち」だと言う。

そりで登る井出さんは、日本で、高山病にならないように腹式呼吸を何度も練習してきたという。「健常者と障害者が一緒に山に登ることで、お互いの間にある壁を越えたところに友情が芽生えるのではないか」という夢を持って登山に参加した。

井出さんは、小学校5年生の時にクラスで蓼科山 ( たてしなやま ) に登った。その後、難病といわれる筋ジストロフィーを患い、5年前から車椅子の生活をしている。小学校の登山の思い出が忘れられず、2年前には信州の八ヶ岳へ背負子に乗って登った。4000メートル級の山に挑戦すると内田さんから話があり「始めは海外にいけるならラッキーと思いました。でも、心臓が耐えられるかどうかという大きな問題を超え、登山の準備をしていくうちに、達成して大きな自信を持ちたいと思うようになりました」と登山前に語った。

後記

8月7日早朝、登山隊はブライトホルンを目指したが「標高4000メートルを超えたところで登頂を断念しなければならなかった」とツェルマット観光局のエバ・フラッタウ広報担当が語った。内田さんは下山後「初めて写真で見たブライトホルンと同じ感情に浸れた。今後も挑戦を続けたい」と語った。(AP)

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