スイスと欧州連合(EU)は20日、貿易や労働、人の移動自由などのルールを盛り込む二国間条約の締結に向けた交渉を完了したと発表した。
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EUのウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は20日、ベルンで開かれた共同記者会見外部リンクで「このスイス・EU間の合意は歴史的だ」と称えた。スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「「今日は喜びの日だ」と語った。今後条文を起草し、2025年春に署名する予定だ。
EU非加盟のスイスはこれまで、EUとの貿易や労働などを120本以上の個別協定で取り決めていた。これを1本化する作業が2014年に始まったが、当初の「枠組み条約」は賃金保証などで折り合いがつかず、2021年5月にいったん交渉は決裂。2022年に複数分野の条約をパッケージ化する「分野別アプローチ」を採用して交渉を再開した。197回に及ぶ会合を経て、ようやく合意に至った。
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スイス政府は声明外部リンクで、全12分野でスイスの利益に沿う内容になったと述べた。「人の自由な移動」に関しては、スイスが経済状況に応じて入国を制限できる「セーフガード条項」を盛り込む。これまでは入国制限にはEUの同意が必要だったが、EUに拒否された場合にスイスは仲裁裁判所に訴えることができるようになる。ただEUが報復的に移動制限をかける可能性もある。
スイスの賃金を保護する措置も盛り込まれる。スイスの賃金水準を損ねそうな新EU法を自動的に国内適用しなくてよいとする「非後退条項」だ。
包括的二国間条約が発効するまでの暫定措置により、2025年1月1日以降、スイスはEUの研究支援事業「ホライゾン・ヨーロッパ」や欧州原子力共同体(Euratom)、業界団体「デジタル・ヨーロッパ」のほぼ全プログラムに参加できる。
結束基金に年間1億3000万フラン
見返りとして、スイスは2025~29年まで、EUの新規加盟国の発展を促すため設立した「結束基金」に年1億3000万フランを拠出することを約束した。
拠出金は、EU域内のスイスのパートナー国のプログラムやプロジェクトに直接割り当てられる。包括的二国間条約が発効し次第、拠出が開始される。
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スイスと欧州連合(EU)は3月、新たな包括的二国間条約の締結に向け、交渉を再開した。スイスのヴィオラ・アムヘルト連邦大統領は年内締結を目指すが、国内で強い反発を呼んでいる。
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2030~36年の拠出額は3億5000万フランに増え、特に移民関連の共同プログラム・プロジェクトに充てられる。
交渉は続く
条約発効の前にも、スイスと欧州委員会は電力網の安全性と円滑な運用のために協力を続ける。パンデミックなど国境を越えた深刻な健康問題が発生した場合、市民を保護するための共同対策をとる。
金融市場をめぐり、適合性評価相互承認協定の実施や諸規制に関する議論も継続される。来春の協定締結に向けて、法的側面の解決と翻訳作業も並行する。
スイス外務省は他の省庁とともに、新条約の内容や関連する国内法、付随措置について国民向けのメッセージを作成する。
連邦内閣は既存の協定や連邦補助金に関する規則、EUのプログラムへの参加、スイスの結束基金への拠出について、政令をとりまとめる。国家補助に関する新3分野(電力、医療、食品安全)については、別の政令に盛り込む。
新条約に関しては、スイス国内で2025年夏から利害関係者の意見聴取手続きが取られる。その後、連邦内閣が条約の構成や、国民に信を問う「レファレンダム(国民表決)」に付すかどうかを決める。2026年に連邦議会での審議にかける。
英語からのDeepL翻訳:ムートゥ朋子
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