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スイスの全州議会が段階的脱原発を可決

ベツナウ(Beznau)原発は廃炉になる予定 Keystone

全州議会(上院)は9月28日、2034年までにスイス国内全ての原発を廃止し、再生可能エネルギーの支援を強化することを決定した。

国民議会(下院)に続き全州議会も新原発建設の禁止を可決。一方で、核関連の技術開発は継続することになったため、その情報を連邦議会に提出するよう、政府に求めた。

 脱原発派は審議の際、原子力の危険性を訴え、約半年前に起きた福島原発事故の惨事を強調した。とりわけ中道左派は、原発よりも優れたエネルギーが選択肢としてある上、核廃棄物問題も解決されていないと指摘した。

 それに対し、経済界と伝統的に強い結びつきを持つ原発推進派の国民党(SVP/UDC)や急進民主党(FDP/PLR)は、脱原発は非現実的で早急だと主張した。

 一方、ドリス・ロイタルト環境エネルギー相は原子力事業からの撤退を力強く訴え、「新エネルギーの促進が成功すれば、スイスの未来を担う子どもたちへの投資となる」と論じた。

 ロイタルト環境エネルギー相はまた、「課題はまだ残っており、(脱原発に対する)疑念が残るのも当然だ」と反対派への理解を示した。「しかし重要なのは、今、始めるということ。国民は政府を信頼してほしい。(脱原発が)未来に向けての正しい道であり、責任感あるすべての国民の支援と共に、これを成し遂げることができるはずだ」と熱弁を振るった。

 連邦議会での可決を受け、政府は今後、原子力法の改正案を作成する。その際、連邦議会は再び脱原発を承認し、その方法を具体化することになるが、このときに脱原発の決定が覆されたり、内容が弱体化する可能性もまだ残されている。

妥協

 28日の議決は、賛成30票以上、反対10票以下と明白な結果となった。その背景には、中道派のキリスト教民主党(CVP/PDC)が推し進めた妥協案を全州議会エネルギー委員会が審議前に奨励したことがある。

 エネルギー委員会は、原発は禁止しても原子力研究は今後も認め、原子力技術を禁止するわけではないことを明白にした案を提出した。こうすることでキリスト教民主党の狙い通り、脱原発に躊躇(ちゅうちょ)していた議員からも賛成票を獲得することができた。

 完全なる脱原発を要求していた国民議会の決議案と今回の全州議会の決定は若干異なるため、国民議会では同議題について再度審議される予定だ。つまり、来月開かれる総選挙後初めて招集される12月の新連邦議会でも、この議論が続けられることになる。

各方面の反応

 キリスト教民主党や左派の社会民主党(SP/PS)および緑の党(Grüne/Les Verts)は、全州議会の決定は新エネルギー政策に向けた重要な一歩だと歓迎し、再生可能エネルギーへの転換を促す方策をさらに進めるよう求めた。

 エネルギー効率の改善を促進する民間団体スイス・エネルギー基金(Schweizerische Energie-Stiftung/Fondation suisse de l’energie)は、連邦議会は産業界と社会に対し明確なサインを送っていると見ている。

 だが、経済連合エコノミースイス(economiesuisse)は、新原発建設の禁止を支持した連邦議会を非難。首尾一貫した現実的なエネルギー政策が必要だと強調し、声明の中で次のように発表した。「電力供給の安定、経済、スイスの独立性、さらには環境に対して、脱原発はどれ程の影響を与えるのか。こうした(脱原発に向けた)政策はそれをはっきりと示さねばならない」

ほかのエネルギー

 スイス政府は今年5月、原子力事業から撤退するという政府案を提出。政府の試算では、脱原発には約38億フラン(約3250億円)の費用がかかる。

 スイスでは、電力需要の約4割が国内で稼働する5基の原発で賄われている。政府はこの割合を、水力発電や再生可能エネルギー、複合火力発電、省エネ対策などで埋める方針だ。

 この数カ月間で、スイスでは反原発を訴える市民活動が再び活発化している。特に目立つのが、ベルン郊外にあるミューレベルク(Mühleberg)原発運営企業の幹部に対する批判だ。この原発は安全基準の改善が求められていたが、つい数日前に再び稼働を始めた。

スイスには現在5基の原発があり、2019年から段階的に稼働が停止される。

隣国フランスからの輸入も含め、原子力発電は現在スイスの電力需要の38%を占める。

水力発電は56%で、残りは再生可能エネルギーなどほかの発電方法で賄われる。

1990年の国民投票で、新原発建設を今後10年間禁止する法案が可決された。この法律が失効して3年後の2003年、国民投票でこの法律の延長も原子力計画からの完全撤退も否決された。

(英語からの翻訳・編集、鹿島田芙美)

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