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スイスの高級ホテル ウクライナ難民を無料で受け入れ

スイス西部の湖畔の町ムルテンに、ウクライナの戦争から逃れてきた難民たちに門戸を開いた4つ星ホテルがある。この「ゼーパークホテル」が無料で提供した部屋の宿泊料金は、通常ならば1泊200フラン(約2万7千円)を下らない。

同ホテルを所有しているのは西欧を拠点とするロシア系移住者らが出資する有限会社で、支配人はベルギー人(匿名希望)。取締役でウクライナ出身のリュドミラ・リガートさんが、戦禍を逃れてきた同胞を助けるよう支配人を説得した。ホテルには、地域のウクライナ人コミュニティーからも食料や衣料、交通手段の提供といった支援が寄せられた。

ホテルの幹部らは、駅に到着した人々の出迎えや朝食のサービスといった役目を自ら担った。湖を一望するルーフトップのスペースに急ごしらえのキッチンを造り、家族連れには部屋にベッドを追加した。これまで同ホテルに滞在したウクライナ難民は200人に上る。

美しい景色にも悲しみは癒えず

エスタヴァイエ・ル・ラックにあるリガートさんの自宅にも、妹のイリーナ・ロッサさんとその家族が身を寄せている。全てを後に慌ただしくキーウ郊外の自宅を引き払わねばならなかったイリーナさん。当時の様子を語る目には涙が浮かぶ。残してきた家族を心配し、一刻も早い帰国を願うイリーナさんだが、今はゼーパークホテルに滞在する同じ境遇の人々のサポート役を務める。

swissinfo.chは、ホテルに滞在していたリーザさん(22)にも話を聞いた。リーザさんは、ウクライナ東部ドンバス地方のクラマトルスクへの攻撃から家族と共に避難。無事ポーランドにたどり着くと、家族とはそこで別れスイスに向かった。長く大変な道のりだったが、スイスは安全で難民に温かいと聞いていた。イリーナさんもリーザさんも受けたショックが依然薄れず、今いる場所の美しさを楽しむ気持ちにはまだなれない、と口をそろえる。

スイスでは6月半ばまでに約5万5千人にいわゆるS許可証が発行された。この許可証があれば、1年間スイスに滞在し、就労することができる。必要ならば延長も可能だ。

(英語からの翻訳・フュレマン直美)

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