スイス 女性を閣僚に選出
6月14日、連邦上・下院の合同会議で、ドリス・ロイタルト氏(Doris Leuthard、キリスト教民主党出身)が有効票234票のうち133票を得て、連邦閣僚に選出された。ロイタルト氏はスイスの歴史上、5人目の女性閣僚となる。
ジョゼフ・ダイス経済相(60歳)が4月27日、7月末付けで辞任を表明したことから、新しく閣僚を選出する必要が出たための今回の選挙だった。
ドリス・ロイタルト氏はキリスト教民主党(CVP/PDC)の党首で、4月に43歳になったばかり。弁護士の資格を取り、出身地のアールガウ州の地方政治で政治家としての経験を積んだ後、1999年から国民議会(下院)議員として連邦政治の舞台で活躍してきた。
あまりにもすんなり
スイスには7人の閣僚がいる。急進民主党、社会民主党、国民党、キリスト教民主党の4つの政党の連立政権で、それぞれの党が2,2,2,1人の閣僚を輩出するのが、暗黙の了解となっている。ダイス経済相はキリスト教民主党の出身閣僚であることから、今回の候補者は同党から出すとの共通認識が、議員の中にあった。ダイス大臣の辞任発表直後、ロイタルト氏が有力候補として名が挙がったが、その後もロイタルト氏の対抗馬として、誰の名前も出なかった。
閣僚選挙が大きな波乱を呼んだのは、2003年のことだった。それまで閣僚の出身党の配分は長い間変動せず、急民党2、社民党2、キ民主党2、国民党1が続いた。しかしこの時、連邦会議員数の変動を理由に国民党がキ民党から1議席を奪い取り、同党のチューリヒ支部長だったクリストフ・ブロッハー氏が入閣した。
ロイタルト氏はダイス経済相の後任として選出されたが、担当する省については、ほかの6人の閣僚との話し合いで決まる。有望と見られるのは、経済省と法務警察省だ。大統領は閣僚内の交代制で、ロイタルト氏が就任するのは、4年後の2010年となる。
社会自由主義者
ロイタルト氏は自らを「社会自由主義者」と呼んでいる。政治姿勢に一貫性がないと一部のマスコミで批判されるのは、この点だ。スイスの経済問題では、郵便の自由化に賛成し、カルテルの取締りの強化を支持ながら、スイスコムのラスト・マイル開放には反対。社会、家庭問題では、妊娠中絶は犯罪としながら、同性愛者の権利を擁護する。しかし、7人の閣僚は、意見を調整し合うのが重要な仕事。閣僚会議の決定と閣僚個人の意見が食い違っていても、公式見解に準じた行動や発言を強いられる。こうした意味では、ロイタルト氏は閣僚として適任かもしれない。
日曜新聞のNZZゾンタークによると、好きな映画は『スター・ウォーズ』、フィル・コリンズやティナ・ターナーを聴く。サッカーのファンで、閣僚に選挙前夜に開催されたW杯、スイス対フランスのサッカー観戦にシュトゥトガルトまで出かけた。若い世代の女性である。
女性には厳しい土壌
スイスで女性に参政権が与えられたのは1971年。その後長い間女性が閣僚になることはなかった。女性で最初の閣僚となったのは急進民主党出身のエリサベス・コップ氏。その後、ルーツ・ドライフス氏(社民党)、ルーツメ・メツナー氏(キ民主党)、そして現職のミシェリン・カルミ・レ(社民党)外相が閣僚として就任した。
しかし、コップ氏は夫のスキャンダルで、メツナー氏は政党間の政治抗争の矢面に立たされ、2人とも辞任を強いられた。ドライフス元内務相は破綻寸前の健康保険問題で厳しく批判を受けた。現在のカルミ・レ外相に対しても、他の閣僚との根回しがないなどの批判がある。男性閣僚より注目されるのが女性閣僚の宿命か。スイスの政界は、いまだに女性には厳しいようである。
swissinfo、佐藤夕美(さとうゆうみ)
7閣僚の配分は急進民主党2、社会民主党2、国民党2、キリスト教民主党1で現在のところ固定。
出身州もなるべく重ならないように配慮される。
アールガウ州からは37年ぶりで閣僚が選出された。
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