ドイツとの納税問題に一応の決着
ドイツとスイスの交渉団の代表は8月10日、ベルンで租税条約に合意した。顧客情報奪取や脱税に関与していた銀行員は、条件付きで告訴されないことになる。
税率や保証金額など、租税条約のカギとなる数字はこれまでにすでに明らかになっていたが、今回の合意後、両国政府が条約に調印すれば議会もこれを批准することはほぼ確実だ。
今後、ドイツ人顧客の資産には税金がかかり、その補償金課税率は26.375%、各銀行が事前に調達すべき保証金総額は20億フラン(約2094億円)と定められた。この保証金はドイツ国庫に対する担保のようなものだ。また、脱税などに関する捜査協力には2年間で1000件未満という上限が設定された。重加算税は資産額と脱税期間によって19%から34%に及ぶ。
2009年3月、スイスは租税問題に関する捜査協力に際し、情報提供について定められている経済協力開発機構(OECD)の規約を新たに用いることを決め、以来、数多くの租税条約を改正してきた。スイスの政府や銀行はさらに、欧州連合(EU)加盟国の中で特にスイスと深い関係を持つ国々とは、同規約を超えた条約を結ぶべきだという考えを示していた。
まずはドイツと
そのような条約を結ぶ相手国として最優先されるべき国がドイツだった。ドイツ人は1世紀以上も前からスイスに預金してきた。スイスの銀行に眠っている外国資産の大部分はドイツのものだと考えられている。
その金額は約1300億ユーロ(約14兆円)に上るといわれているが、金融関係者によると、その中の多くはすでにドイツ政府やEUの手の届きにくい国に移されている可能性もある。
金融顧問企業エコフィン(Ecofin)のマルティン・ヤンセン氏は「とても良い条約だ。ミヒャエル・アンビュール率いるスイスの交渉団はいい仕事をした」と条約締結を称賛する。
盗難情報
スイス銀行家協会(SwissBanking)は、この条約により「ほとんどの顧客は、過去を清算するに当たって実質的に総資産額の20%から25%を税金として支払わなければならなくなる」と見積もっている。しかし今後は、税規定にのっとった資産を獲得し、管理していくことが可能だと期待する。
一方、ドイツ当局は非合法に入手された顧客情報の購入を容認し、過去数年間、何度か論議を巻き起こしたが、これに関する争いも条約締結とともに収まるはずだ。ドイツ財務省は、条約締結により「盗まれた銀行顧客情報を買うような事態はなくなる」と述べている。
スイス側にも義務が課され、非合法の情報入手に関与した人物を訴えないことに同意した。これによって、これまで問題になってきた情報の提供者は罪を問われないことになった。しかし、ドイツ側もまた、条件付きではあるが、脱税に関与した銀行員を訴えないことに同意した。
今回の条約がモデルとなれば、この先ほかの国とも同様の租税条約を結んでいくことになる。この条約は「法の安全性をもたらした」とエヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ財務相も満足気だ。
(独語からの翻訳・編集、小山千早)
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