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問われるブロッハー司法相の資質

秋の総選挙を控え、スイスの政界は騒乱状態に陥っている。台風の目は国民党 ( SVP/UDC ) のクリストフ・ブロッハー司法相だ。

国民党は右派中道の政党だが、過激な発言や行動が多い。外国人問題やスイスの独立性維持を前面に押し出して、この10年で一挙に人気を高めてきた。

 ブロッハー司法相が連邦大臣に選出されたのは、前回の連邦議会総選挙の後。それまで連邦内閣は、「魔法の公式」と呼ばれる議席配分により、急進民主党 ( FDP/PRD )、社会民主党( SP/PS )、キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) からそれぞれ2人、そして国民党から1人の連邦大臣が選出されていた。しかし、4年前、躍進を続ける国民党は支持率が下がっていたキリスト教民主党の議席をついに1席奪い取った挙句、左派政党の反対を押し切ってブロッハー氏を連邦大臣に押し上げたのだ。

司法相の問題とは

 連邦制を伝統とするスイスの政府は合議制を採用している。連邦政府は4つの政党から成っているが、「連邦大臣の決議」は1つにまとめられ、個々の連邦大臣の意見は、通常、表には出てこない。

 ところが、ブロッハー司法相は、就任以来、何度もこの不文律を破ってきた。「連邦大臣の決議」とは異なる個人の見解を発表してほかの連邦大臣の怒りを買ったこともたびたび。彼が提唱する難民政策には、国際連合 ( UN ) やアムネスティ・インターナショナルも非難の声を高めている。そして、今回のローシャッハー前司法長官辞任に関する報告書 ( 9月6日報道 )。この中でも、ブロッハー司法相の複数に及ぶ越権行為が批判された。

 社会民主党としては、このような単独行動が目立つブロッハー司法相を今年12月の連邦大統領信任選挙で不信任に追い込みたいところだ。そのため、国民党はこの「陰謀説」も左派の「秘密作戦」( 9月3日報道 ) の1つだと主張している。

 この「陰謀説」は、1984年に初の女性連邦大臣に選出されたエリザベート・コップ氏がわずか5年後に失脚したときの状況によく似ている。夫が関係している会社の資金洗浄問題を聞きつけ、ひそかに夫に知らせたコップ元司法相、そして同じく資金洗浄の疑いをかけられていた旧友を守ろうとローシャッハー前司法長官を辞任に追い込んだといわれるブロッハー現司法相。これからの成り行きには注目せざるを得ない。

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