国民投票、僅差で国防法改正案承認
10日に行われた国民投票の結果、「平和維持活動に参加するスイス兵の武装」「NATO(北大西洋条約機構)平和のためのパートナーシップの軍事演習など他国との共同訓練へのスイスの参加」の2つの軍改革案は、賛成が反対を2%上回るという僅差で承認された。
投票の行方は、スイス26州のうち人口の多いベルン、チューリッヒ、ヴォーの3州の結果が出揃うまでは判断できないほどの、近代史上初といってよいほどの緊迫した国民投票だった。概括的に見て、西部の仏語圏と、独語圏スイスの右派人民党員で孤立主義を唱えるクリストフ・ブロッヒャー国民議会議員率いる反対勢力の優勢な地域では反対票が多かった、また、都市部では賛成票が上回ったが村落部では反対が多く、都市部と村落部での意識の違いも明白なものとなった。
法改正案が承認されたことを受け、サミュエル・シュミッド国防相は歓迎の意を表明した。が、賛成と反対の票差が極めて少なかったことから、国防政策に関して国民との対話が必要で、新たなコンセンサスを探ると述べ、政府は軍改革を断行する白紙委任を託されてはいないとの認識を示した。連邦政府および連立内閣を構成する与党4党うち3党(急進民主党、キリスト教民主党、社会民主党)は、改正案を承認するよう強力なキャンペーンを推進してきたが、左右両勢力から予想以上の強い反対に遭った。右派勢力は、改正案が承認されたらスイスの若者達が国外の戦場で命を落とすことになると示すポスターを作製し感情的な反改正運動を展開する一方で、スイスの国際軍事行動への介入を増加することは伝統の永世中立政策を侵害するものだと主張し保守層に訴えた。一方左派勢力は、スイスは軍隊によらない国際平和への貢献の道を選ぶべきだと主張、さらに国際貢献のためと称して増額される軍事予算を社会福祉に回すべきだとの理由で改正案に反対した。
スイスはコソボでの平和維持部隊に小規模なから派兵していたが、スイス軍は国外での武装が認められていないためオーストリア軍の保護下に置かれた。また、昨年11月にはスイス・ルツェルン湖畔で第1回北大西洋条約機構(NATO)の平和のためのパートナーシップ(PFP )合同演習が行われた。この演習は、バーチャルPKOプログラムを用いたコンピューター上での平和維持活動だったが、欧州各国の兵士が一同に会し国連安保理委任下での停戦の実施や人道援助提供の訓練を行った初の合同演習だった。
10日の国民投票は、来年予定されている国連加盟をかけた国民投票の行方を占うものでもある。ジュネーブの国連欧州本部その他、多くの国連機関がスイスにあるにも関わらず、スイスは国連に加盟していない。国連加盟を問う国民投票は1986年に行われたが、反対75%以上で否決された。スイス連邦政府は、今度こそ国連加盟を承認するよう、国民に対し強く呼び掛けている。
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