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国民投票、障害者保険改定案

今後障害をもった労働者も職場に残るようになるだろうか

6月17日に行われる国民投票は、障害者保険 ( IV/AI ) の第5回改定案に対して国民の賛否を問うものである。

2006年10月に連邦議会を通過した障害者保険の改定案は、障害を早期に発見して対応を行い、できるだけ職場に残れるように提案したもの。これに対しレファレンダムが起こり、国民投票となった。

 障害者保険は1960年に成立し、スイスに居住権が認められた人すべてに加入が義務付けられている保険制度。身体の障害で働けなくなった人に対し、月に最高額2210フラン ( 約22万円 ) を保証している。もともと職場への再復帰も見越しての制度だが、それがうまく機能していない上、精神疾患による保険受給者がここ10年間で急増し、運営状態が悪化。政府は改定案を提示することになった。 

運営状態の危機

 1997年の障害者保険受給者数は17万3000人だったのに対し、2006年1月には29万9000人に増加した。理由は精神疾患の受給者の増加だという。精神疾患の受給者は年間およそ8%ずつ増え、しかも受給理由のトップになっている。 

 こうした受給者の増加に比例して、障害者保険は現在90億フラン ( 約9000億円 ) の赤字を抱えている。今回の改定案が認められれば、補償額が少なくとも年間5億フラン ( 約500億円 )は節約できるだろうとみられている。

各界の意見

 政府側の改定案は、必ずしも財政面の改善のみを追及するものではない。改定案によれば、障害者はその病気を早期に発見し、継続的な治療、対応を強化し、本人も積極的にこうしたプロセスに参加することなどで、より多くの障害者が職場に残り働き続けることを奨励するものだからだ。

 特に若い世代での精神疾患では、早期に発見し、適切なトレーニングを行うことで、障害に適した職をみつけられるよう援助することなどを提案している。また雇用者側にも障害者が働き続けられるよう対策を講じることを奨励するとしている。

 これに対し、多くの障害者協会、労働組合、社会民主党をはじめとるす左派政党がこの改定案に反対している。雇用者と医者が障害者保険受給の決定権を持っていることと、雇用者には障害者を雇う義務がないという事実などを挙げ、基本的に障害者に対するサービスが低下すると主張している。

 しかし、この改定案が通れば、障害者は「退職までは仕事をする」という前提によって、障害のせいで解雇されなくてよくなるという賛成意見や、雇用者側にとっては障害を持った労働者のトレーニングや治療にかかる時間などがかえって負担になるという反対意見などがあり、複雑な問題を投げかける国民投票である。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

障害者保険はスイスに居住権が認められた人に加入が義務付けられている保険である。

身体全体または一部の障害によって、働けなくなった場合に保障を受け取ることができる。

障害者保険は特別な施設の資金援助も行う。保険費用の40%が、労働者と雇用者によってまかなわれている。残りは、公的な基金が負担する。

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