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国連人権理事会の挑戦

スイスのカルミ・レ外相は人権問題に特に力を入れてきた. RDB

6月19日からいよいよ、スタートする「国連人権理事会(Human Rights Council)」の創設に奔走した、スイスのミシュリン・カルミ・レ外相がスイスインフォとの独占インタビューで今後の挑戦を語る。

カルミ・レ外相によると今年は、人権理事会には効果的な制度を発展させ、軌道にのせるとともに人権侵害国との対話を重視しながら、人権侵害を受けた被害者をも忘れないという幾重もの任務が与えられている。

国連改革の一貫である、人権理事会の創設が今年の3月に決まり、いよいよその活動が6月19日からジュネーブ欧州本部にてスタートする。スイスは5月9日にニューヨークの総会において人権理事会の理事国として日本とともに47カ国の中に選出された。この理事会創設に提案者として奔走したスイスのカルミ・レ外相がこのジュネーブで発足される理事会への期待と抱負を語った。

swissinfo : 今年は人権理事会発足の年となりますが、初年に出会う難関はどのようなものになるでしょうか?

カルミ・レ  : 確かに、今年は過渡期となるでしょう。理事会は今後のプログラム、手続きの仕方のルールや理事国の人権状況を審査する相互監視(Peer review)のメカニズムを練らなければなりません。

大きなチャレンジにはこのような機関が効率よく、はっきりしたルールを提示して制度として機能するとともに、当初の人権保護の任務を果たすというバランスが大事でしょう。発足の年だからといって、人権侵害が起こった状況を見過ごしたり、人権擁護が後回しにするわけにはいきません。

swissinfo: 現在の人権理事国の方が、前の人権委員会のときよりも人権擁護を強固にする国際システムを構築するのに抵抗を示す国々が比較的に多くなったようですが? このような、アフリカ・アジアのグループ抵抗勢力が理事会を弱める危険はありませんか。

カルミ・レ : 各地域グループから代表国が選出されるといったルールは国連の総会の規則に従ったもので、それを変えることはできませんでした。

そういっても、これまでの政治的対決といったやり方から離れて、新たに対話を重視する姿勢は最も重要でした。我々は、全く嫌疑から遠い、「いい子ちゃんクラブ」が「悪い国」を批判するといった理事会を希望していたわけではありません。そのような理事会だったら上手く機能しないでしょう。

スイスは人権侵害国も疎外せず、対話相手としてアプローチするという方法を最善とします。前人権委員会で行われていた、指を刺して非難するアプローチの仕方を絶つべきだと考えています。しかし、これには外交官など各国の代表がこのアプローチの変化を認識しなければなりません。

各理事国は選出されるに当たって、自国の人権改善の義務が伴われることを忘れてはなりません。

swissinfo : 独裁的な国家を相手に人権に関する対話をするというのは実際のところ可能なのでしょうか?お互いの騙し合いになるのでは?

カルミ・レ  : 多国間で行われる場合は扇動と対話の間の微妙なバランスが必要です。この意味で相互審査のメカニズムは良い道具となるでしょう。スイスはこれがきちんと機能するように力を入れていきます。

一方、2国間ではスイスは人権改善についてベトナム、中国やイランといった国と対話をしてきました。このような場合は、死刑や拘留状況などといった具体的な問題についての話し合いもします。

結果はいつも理想的というわけではありません。しかし、改善は見られますし、スイスは常にこのような国との橋がかりを重視してきました。

そのうえ、現在では人権擁護(社会的権利や市民、政治権を含め)はその国の発展にとって重要であるといった認識がだんだん強く浮かび上がってきました。その証拠として、国連内での人権理事会の地位の格上げが挙げられます。理事会が直接、総会の傘下に置かれるという選択は国際社会が決めたものですから。

swissinfo : 理事会がジュネーブに設置されたことでどのようなメリットがありますか。

カルミ・レ : 今日、ジュネーブは人権、そして国際人道支援の首都といえるでしょう。国連人権高等弁務官事務所(UNOHCHR)の本部があるとともに、国際赤十字(IRC)の本部もあります。ですから、今後、それらの共同作業や発展に重要な可能性があるでしょう。このダイナミックスは人権理事会創設によってさらに強化されるでしょう。

具体的に言えば、国連人権高等弁務官の本部の職員は現在の300人から、ここ2年で700人に増加され、予算も2倍になります。さらにスイスはホスト国として、ジュネーブに代表部のない小さな国へのインフラ整備など支援協力することを約束しました。15カ国ぐらいがこの恩恵を受ける予定です。今後はNGOなどもさらにジュネーブで発展することが予想されます。


swissinfo 聞き手、フレデリック・ビュルナン 屋山明乃(ややまあけの)意訳

– スイスは人権理事会創設を記念して、6月19日にミシュリン・カルミ・レ外相から国連コフィ・アナン事務総長、総会のヤン・エリアソン議長、ルイズ・アルボール国連人権高等弁務官と人権理事会のルイズ・アルフォンソ・デ・アルバ議長へのスウォッチ時計の贈呈式が行われる。スウォッチのニコラ・ハイエック会長も出席。

– スイスは人権理事会創設を記念して国連人権高等弁務官事務所があるパレ・ウィルソンへスイス人アーチスト、カール・ブーハーの彫刻『希望の印』を贈呈する。

– スイスは6月24日に世界の人権状況を考察する『人権の本(Human Rights book)』をチューリヒで出版する。

– また、スイスはこれを機に2007年10月からジュネーブ・アカデミー(Geneva Academy)という国際法や人権問題を専門とするマスターコースの学校を創設する予定。

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