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スイスの基礎自治体、連邦に「ノー」を言う権利求める

Citizens taking part in an open-air local assembly
政治への関心や投票率を高めるアイデアをローカルレベルで模索している。チューリヒ近郊の自治体バッサースドルフでは、野外での市民会議を試みたが、その効果は限定的だった Thomas Kern/swissinfo.ch

世界にある民主主義国の中でスイスほど参政権が充実している国はほかにない。そんなスイスでは今、連邦の決定に「ノー」を突き付けることができる権利を基礎自治体(市町村)に認める案が議論されている。しかし、連邦議会で支持される可能性はほとんどない。

 過去170年間で600件以上の国民投票が行われたスイスは、直接民主制における世界チャンピオンだ。

 忘れられることもあるが、立法プロセスに参加し、年に最大4回行われる国民投票に参加する権利は19世紀の激しい政治バトルの末に勝ち取られたものだ。

 現在は、スイスにある2222の基礎自治体の大半を代表する上部団体が最近、州や市民だけに認められている抗議の権利を基礎自治体にも与える提案を発表した。

 この団体が求めているのは、連邦レベルにおける新しい拒否権の導入だ。提案では、連邦議会で可決された法律に対し、全26州中15州で少なくとも200の基礎自治体が反対すれば、国民投票で最終判断するという。

 「基礎自治体はこの数十年で州や連邦当局に対して立場が弱くなった」とこの団体は主張する。

逆境に立たされる基礎自治体

 実際、スイスの連邦、州、地方自治体の3層政治制度で、ローカルレベルを担う基礎自治体の多くが、存続の危機にもがいている。

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 理由の一つは、地方自治体が対処しなくてはならない問題が複雑化していることだ。これにより、地方自治体の財政がひっ迫するようになった。その上、基礎自治体の多くでは公務を引き受ける志望者がなかなか見つからず、住民投票の投票率は30年間低下を続けている。

 問題の複雑化に志望者不足が加わったことで、マイナスの影響が表れた。基礎自治体の数が過去30年で約25%減少したのだ。800ほどの基礎自治体が他の基礎自治体と合併により消失した。

 それに加え、権力がローカルレベルから州レベル、連邦レベルへと劇的に移行している状況は今後も続くだろうと専門家はみる。

 基礎自治体はしばしば、連邦当局や州当局が決定した新しい規則を実施するだけの存在になっている。典型的な例が社会保障の給付だ。スイス連邦憲法によれば基礎自治体は財政自治権を持つが、基礎自治体はその権利をほとんど失っている。

 基礎自治体に拒否権を与える案は、国民議会(下院)の議会委員会ではあまり支持されなかった。だが全州議会(上院)の議会委員会ではそれほど否定されないだろう。全州議会は伝統的に国民議会に比べ、州や基礎自治体の関心事に理解を示すからだ。

 それでもなお、提案の立法手続きがスムーズに進むことはないだろうと専門家はみる。

 基礎自治体当局は、レファレンダム請求権(市民や団体のための拒否権)や国民発議権(イニシアチブ)を求めて戦ってきた人たちと同じような経験をすることになるかもしれない。

 現代のスイスが築かれた1848年以降、これらの直接民主制における参政権が導入されるまで、レファレンダム請求権は26年、国民発議権は43年かかったのだ。

英語からの翻訳・鹿島田芙美

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