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日本訪問直前のスイス大統領に聞く

ジョゼフ・ダイス大統領。執務室で3度目の日本訪問の抱負を語る。(佐藤写す) swissinfo.ch

9日から日本を訪問するジョゼフ・ダイス大統領が出発前、大統領執務室でスイスインフォのインタビューに応じた。日本では小泉首相と会見するほか、天皇に謁見する予定。在日のスイス企業を訪問し、日本の経済界の代表者も会うなどスイスと日本の関係の親密化を図る。

大統領は日本の人達に「ハイジのスイス」ばかりではなく、スイスの持つダイナミズムも知って欲しいと語った。また、永世中立国としての国連での役割について説明。経済面での両国の協力の必要性も語った。

——愛知万博にスイスが参加します。ハイジやエーデルワイスの国といった決まりきったイメージを払拭し、スイスの真の姿をアピールしたいとスイス館の担当者は語っています。大統領は日本人にどのようなスイスを知って欲しいと思いますか。

 スイスも日本に対して固定観念を持っている。日本は「キモノ」や「フジヤマ」で象徴されている。それもひとつの真の姿だが、固定観念だけでその国を判断すると、真実からは遠ざかってしまう。日本がバイオテクノロジーなどハイテクの国で、モダンな社会が営まれているように、スイスも同じ分野が得意だということを日本の人達にも知ってもらいたい。

——大統領は経済相として、スイスの産業は非常に進んでいると外国にアピールする使命を強く意識しているのですね。

 スイスの経済が発展していることは知られている。日本とは(農業分野で同じような問題を抱える)世界貿易機関(WTO)の交渉はもとより、貿易、サービス、直接投資などの面でも深い関係を結びたいと思っている。経済関係については、具体的な提案をするつもりだ。

——戦後スイスは永世中立国として、日本の手本となりました。スイスのいまの中立性について説明してください。

 スイスの永世中立の立場はいまも変わっていないが、新しい状況にスイスは適応している。2002年、スイスが国連へ加盟した際にも、永世中立国であり続けると明言した。
もっとも、加盟以前から世界の安全、国際協力、平和維持活動など、中立性に抵触しない部分で、積極的に活動して来ている。

 2001年6月には武装した軍隊を平和維持のために国外に派遣することが国民投票で可決された。中立とは矛盾しないとの考えからだ。すなわち、国連の決議があり指令があれば、平和維持軍を派遣する。これは一つの国に荷担し、他の国と対立する行為ではなく、平和に対して国連の枠内で貢献することである。

 スイスは、国連の安全保障理事会が決定した経済制裁にも参加している。スイスの独立性が否定されない限り、世界の平和と人権と富のために、貢献したいと思っている。

——スイスと日本はバイオテクノロジー、ハイテク産業など得意な分野で競合します。日本企業がスイスに進出した場合、どのような可能性が期待できるでしょうか。

 (資本主義市場の中で)競争することで、お互いの力を発揮する可能性がある。スイスが得意な分野に日本企業が進出し成功することは、スイスにとって問題ではない。競争が敗者と勝者を生むのではない。競争のメリットは、全員が勝利することだ。商いには必ず二人必要だ。両者が「良い商いになる」と思わない限り、商売は成立しない。

 だからこそWTO交渉などでスイスは日本とも協力し合っている。また、日本とスイスはお互いルールを決め、もっと競争すべきだと思う。両国間の貿易や対外投資を活発にすべきだ。
 

——2002年9月10日、スイスは第190番目の国連加盟国になりました。現在、国連でスイスが担う役割とはなんでしょうか。

 国連の改革を進めなければならないと考えている。改革は、組織として効率を良くし世界の平和や発展に貢献するためのものである。

 国連が効率よく運営されるためには、国連の国際政治における指導力が強化さなければならない。国連に資金面などで貢献している諸国は尊重されなければならず、そのために常任理事国の枠拡大が必要となる。

——日本の国連安全保障理事会の常任理事国への立候補に対する、スイスの立場を聞かせてください。

 先日、私は国連で常任理事国の枠拡大を支持すると表明した。演説の中でわたしは、国連は途上国への擁護がいまだに不十分だが、一方で、資金面での貢献や平和維持軍を送るなどして貢献している国々も尊重すべきだと言った。日本は後者に属する。常任理事国になるかは、日本が所属するアジア諸国の中で検討されなければならないと考えている。

——常任理事国の拒否権についてはどう考えますか。

 拒否権については、慎重に扱うべきだと思っている。話し合われる問題に直接の該当国が拒否権を行使することには理解を示すが、単に拒否権を行使することで問題の解決が滞るのは問題だ。常任理事国の増員の際にも、新しく拒否権を与えることには、スイスは慎重な態度でいる。

スイス国際放送 聞き手 佐藤夕美(さとうゆうみ)

2003年
スイスからの日本への輸出
51億4,000万フラン(約4,370億円)
機械、技術機械器具、化学薬品、医薬品
日本からのスイスへの輸出
26億4,000万フラン(約2,244億円) 
自動車、家電、機械、化学製品

ジョゼフ・ダイス大統領
1946年1月18日フリブルク州生まれ
家族 妻と3人の子供
経済学および社会学博士
フリブルク大学教授を経て、
1991年から国民議会議員
(キリスト教民主党)
1999年から2000年まで外相
現在経済相を兼任
大統領は7人の閣僚が輪番で1年間兼任。

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