スイスでは、父親の育児休業が法律で保障されていない。今夏初め、父親が20日間の育児休業を取得できるよう求めるイニシアチブ(国民発議)が出されたが、先進国の育児休業日数と比べると、それでも少ない。
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経済協力開発機構(OECD)が35カ国を対象に父親が取得できる育児休業日数をまとめた2015年の統計によれば、最も多いのが韓国の371日で、日本は365日。35カ国の平均は約2カ月だ。
イニシアチブが要求する4週間(休日を除く)はOECDの平均値以下。OECDのランキングでも、スイスは米国、カナダと並び最下位だ。
イニシアチブの国民投票が実現するまでには3~4年かかる見込みで、結果がどうなるかも未知数だ。ただ、15年にイニシアチブの発起人らが実施した代表調査によると、父親の育児休業を支持した人は全体の81%に上った。
しかし、スイスでは母親の育児休業を認めるのにも苦難の道をたどった経緯がある。ましてや父親の育児休業となると、すんなりいくのだろうか。
この国では母親の育児休業が認められるまでに70年の年月を要した。04年の国民投票でようやく可決され、始まったのは翌05年だが、こうした権利はすでに1945年に憲法に盛り込まれていた。05年以降、仕事を持つ女性は14週間の育児休業が認められ、その間は給料の8割が支払われる。だが男性にはそのような制度がない。
父親に4週間の育児休業が認められれば、母親と2人合わせて計18週間の育児休業を取ることができるようになる。
(独語からの翻訳・宇田薫)
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チューリヒ大学の家族社会学者フランソワ・ヒョプフリンガー氏は独語圏日刊紙シュヴァイツ・アム・ゾンターグの取材に対し、世界的に不安定な時代において、家族に対する意識が高まったことが、スイスのベビーブームの到来につながったのではないかと話す。
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