連邦議会 UBS条約を承認
現現在開かれている連邦議会の上下両院で、昨年8月にスイス政府がアメリカ政府と交わしたUBS銀行に関する条約が承認された。6月17日にはこの条約を任意のレファレンダムにかけないことで両院の意見が一致し、国民投票は行われないことになった。
この承認に大きく貢献したのは、途中で主張を翻した国民党 ( SVP/UDC ) だ。これにより、急進民主党 ( FDP/PLR ) とキリスト教民主党 ( CVP/PDC ) が左派を抑えてUBS条約の承認にこぎつけた。
4450人分のUBS顧客情報を譲渡
条約が承認されるためには上下両院議会の承認が必要だが、今回、国民議会 ( 下院 ) でいったん否決されたため、再び全州議会 ( 上院 ) で審議し直すという長いプロセスを経ることになった。国民議会の再審議でようやく承認が得られたが、さらに両議会でレファレンダムについての結論が一致する必要があった。
国民議会では国民党議員の多数が白票を投じたため、全州議会に次いで任意のレファレンダムを否決することになった。レファレンダム反対は81票、賛成は63票、白票は47票だった。
一方、左派はこれまでの態度を崩さず、これまでの討議で議会がUBS条約を銀行やボーナスの規制と連結させなかったことから、任意のレファレンダムを可決するよう国民議会で呼びかけた。
経済界は、条約承認と任意のレファレンダム否決という結果に大きく安堵した。だが、規制を定めるなどの補助策を講じなかったことから、銀行に好き勝手なことをさせる自由を与えたという批判的な意見も聞かれる。
UBS条約は、1996年に結ばれた現行の租税条約に基づいたもの。その中の26条で、脱税事件などで捜査の協力を行うことが取り決められている。UBS条約では、スイス政府はアメリカ政府に対し、今年8月末までにUBSのアメリカ人顧客4450人分のデータを引き渡すことになっている。
連邦納税事務局 ( ESTV/L’AVC ) は今回の決定より先に、本人の了承を得た上で500人分のUBSの顧客情報をアメリカに公開した。連邦司法警察省 ( EJPD/DFJP ) によると、間もなく1200人分の顧客情報もアメリカに渡されるという。実質的には、スイスの銀行守秘義務はこれで崩壊したといえよう。
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