金融・経済危機の中でのスイス・EUの今後
スイス国民が2月8日、欧州連合 ( EU ) との2国間協定の継続及びルーマニア、ブルガリアとの人の往来の自由化を承認したことで、EUとの2国間関係は再び新局面を迎えることになった。
この国民投票の結果を受け2月17日、連邦外務省 ( EDA/DFAE ) のEU政策導入局長ウルス・ブッハー大使は「国民投票でスイス国民は賢明な選択をした。特に金融・経済危機の中でスイスは孤立してはやっていけない。EUとの協力関係を大切にして開かれた市場を維持することが重要だ。EU側も信頼できるパートナーとして、スイス国民の選択を高く評価した」と語った。
今後の課題
30年間に渡る2国間協定の歴史の中で、成功例として挙げられるのは、「人の往来の自由」と「警察・司法・難民 関連の協力 ( シェンゲン・ダブリン協定 ) 」で、特に後者の昨年12月実施された「シェンゲン協定」は、フランスなど隣接国のみならずEUメンバー国すべてと理想的な協力関係を築いていると、ブッハー氏は語った。
小、中期的な展望からは、EU側と確認し合った今後の交渉課題として、健康問題、特にEU側の感染症予防対策や食品の安全対策へのスイス側の参加、電力の国境を越えた取引や市場への自由なアクセス、農産物の低関税での取引、サテライト「ガリレオ」を使ってのカーナビゲーション、二酸化炭素 ( CO2 ) の排出権取引、国際的平和推進などがあり、徐々に交渉のテーブルに乗せられる。
そのほか、
「スイスの税制や銀行の守秘義務などが数年来EUの批判の対象になっているが、銀行の守秘義務はEUメンバー国の中にも存在するし、これらは今後とも時間をかけて交渉を続けていく課題だ」
と、ブッハー氏は述べた。
相互にとって最適なメカニズム
交渉のメカニズムは、相互にとって最適であり、スイスの独立性が尊重され、またスイスの経済的発展に支障をきたさない範囲での受け入れといった、基本的枠組みの中で行なわれると語り、またシェンゲン協定のように将来スイスも受け入れ予定がある法規作成に関しては、
「初期の段階からスイスのエキスパートもEU側の法規作成プロセスに参加すべきだ。そうすることで、スイス側も自国の法規との調整を初期の段階から探ることが可能だからだ。またそれをスイスが適用するための時間やプロセスも尊重すべきだ」
と語った。
EU との近年の関係については、「シェンゲン協定」など多くの協定が実施に移される中、対話が緊密になり、月に1度の割合で閣僚レベルでの会合が持たれるようになっていると説明し、
「10年前には考えられなかったほど話合いが頻繁に行われ、スイスもEUも一緒に肩を並べて発展して行こうという姿勢で一致している」
とブッハー氏は結論した。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
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