2021年11月28日のスイス国民投票
11月28日に行われる国民投票では、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)対策が再び議論の中心を成し、世界で初めてワクチンパス適用の是非が問われる。また、看護職員の確保・支援、連邦裁判官を抽選方式で選出するかどうかの賛否も問われる。
多くの国と同様、スイスでもCOVID証明書が論争を招いている。レストランや映画館など屋内の公共施設では、このパスの提示が必要となり、反対派は街頭で抗議活動を行った。
スイスでは世界で唯一、ワクチンパスの提示義務の是非を有権者が決める。COVID-19法についてスイス国民が審判を下すのは2回目だ。この法律は、新型コロナウイルスのパンデミックを管理するための手段として、まず6月に60%以上の支持で可決された。今回は、ワクチンパス使用の法的根拠となっている同法改正案について、国民の意思決定が求められている。
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賛成派にとって、COVID証明書はパンデミックとの戦いに不可欠な手段。反対派にとっては、個人の自由を阻害するものだ。
10月初めにスイス公共放送協会(SRG SSR)の委託でgfs.bernが行った世論調査によると、COVID証明書は論争が巻き起こっているにもかかわらず、スイス人の大多数が賛成している。
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看護の質を高めるには?
「看護師イニシアチブ」にもパンデミックが色濃く影響している。ロックダウン(都市封鎖)のときにバルコニーから拍手喝采を浴びた看護師たちは、スイスの看護職の深刻な人材不足を解消するための行動を求めている。
2017年にスイス看護師協会が提起したイニシアチブ(国民発議)は、何よりもまず労働条件の改善を求めている。しかし、政府や国会はこの提案を行き過ぎだと考え、イニシアチブの求める研修の促進と看護師のスキルアップを盛り込んだ間接的対案を提示した。
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すでにパンデミック発生前から、看護師の労働環境は、ストレス、認識の欠如、低賃金という厳しいものだった。コロナ危機より数カ月前に行った調査では、看護師の厳しい現実に光が当てられた。
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司法の独立性
スイス国民は、司法制度に関するイニシアチブにも投票する。政党からの独立性を保証するため、連邦裁判官を抽選で選出する案だ。
現在、裁判官は連邦議会で選出され、政党の議席配分に応じて連邦政府の判事職を割り当てる。つまり、無所属の人が裁判官に選ばれる可能性はない。このようにスイスの司法制度は、政治と密接に結びついている。
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裕福な企業家アドリアン・ガッサー氏を中心とする市民委員会が立ち上げたこのイニチアチブは、可決する見込みがない。政府も議会もほぼ全会一致でこの提案に反対姿勢を示した。反対派は、現行のシステムは機能しており、連邦最高裁の判断は独立していると主張する。
「最善の判断をすべき最高の人材を、政治家が任命する代わりに偶然に委ねることになる」と急進民主党の下院議員アンドレア・カローニ氏は批判した。
イニシアチブの支持者は、連邦裁判官の選出が抽選方式によって非政治的なものになると考える。ルツェルンの中道派政治家で、イニシアチブ委員会のメンバーでもあるカリン・シュターデルマン氏は、「ポスト配分の政治性と、所属政党に支払う『委任税』は、司法の独立性の原則に反する」と述べる。
このイニシアチブによって、女性裁判官の数は増えるのか?イニシアチブ支持者は増えると考える。スイスの裁判所における女性の割合について論文を書いた弁護士のニーナ・オクセンバイン氏さんは、抽選はジェンダーバランスの改善にはつながらないとみる。
研究者マルグリット・オスターロー氏にとってはその逆で、裁判官が抽選で任命されるようになれば、女性の候補者が増えるとみる。このことは、女子学生と男子学生を対象とした実験で実証することができた。
▼投票結果がリアルタイムでわかるグラフィック
(仏語からの翻訳・上原亜紀子)
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