同性婚合法化と富裕層増税を国民投票で問う
スイスの有権者は9月26日、同性カップルの結婚を合法化するかどうかを国民投票で決める。富裕層の所得税を引き上げる左派の提案も国民の審判を受ける。
26日の投票は社会的に重要な転機になるかもしれない。民法典を改正して女性同士や男性同士の結婚を合法化するか、国民投票で賛否を問う。西欧諸国の大半では既に合法だ。
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あらゆる世論調査で、同案は可決される見通しになっている。スイス公共放送協会(SRG SSR)の調査でも、賛成がやや勢い落としつつも反対を大きく上回った。
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反対派が特に案ずるのは、女性カップルに生殖補助医療への道を開けば、子供の福祉に反することになるという点だ。
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一方で賛成派は、同性愛カップルに異性愛者と同じ権利を与え、スイスにいる数千組の同性家族により手厚い法的保護を与えるべきだと主張する。
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LGBTIQ関係者は、40年以上にわたって同性婚の合法化を求めてきた。最初に変えようとしたのは法律ではなく教会だった。1960~70年代に、教会は同性婚を正常な結婚とするための議論を始めた。スイスの同性愛の歴史に詳しい歴史家のティエリー・デレッサート氏は、「世間から排除され日の当たらない場所にいた同性愛者たちは、時が経つにつれ正当な対話相手と成長した」と解説する。
同性婚の合法化により、女性配偶者を亡くした女性への法的差別も解消する。現在、子供のいない女性カップルは遺族年金を受け取ることができない。
格差拡大を埋める試み
9月26日には、「賃金への負担軽減と資本への公平な課税」イニシアチブ(国民発議)、通称「99%イニシアチブ」も投票にかけられる。
このイニシアチブは、社会民主党青年部が提起した。スイス国民の経済的不平等を改善するのが狙いだ。
具体的には、国および州レベルでの資本所得(キャピタルゲイン)に、通常の所得税の1.5倍の税金をかける。株式の配当や売却益、利子や家賃収入などが対象だ。
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賛成派は、同イニシアチブは平等な社会に向けた一歩だと主張する。可決されれば健康保険や保育、公共交通機関などの原資となり、国民の大多数に利益をもたらすという。
これに対し反対派は、増税はスイスの経済と競争力を損ない、富の再分配にはつながらないと主張する。経済に予測不可能な悪影響が出るとも警告する。
波乱がなければ「99%イニシアチブ」は否決の道をたどりそうだ。SRG SSRの世論調査によると、回答者の57%はイニシアチブに反対票を投じる予定だ。
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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