スイスの給与は本当に「高い」のか
スイスでもしあなたが男性銀行員、外交官、もしくは外国人最高経営責任者として活躍しているのなら、何千万という年収で快適に暮らしているかもしれない。しかしそれ以外の人々は「スイスは高給取り」という一般のイメージとは少し異なる。
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スイス人の大半が金持ちというのは本当か?
月の平均給与が6502フラン(約71万円)ともなれば、働くには最も魅力的な国だと考えるのも無理はない。多くの職業の平均給与は、確かに他の国よりも高い。例えばスイスの幼稚園教諭の給料は月額4977フランで、米国の約2400フランよりずっと多い。
店員は月平均で4483フラン、4年以上の経験を持つ熟練れんが職人は5553フラン稼ぐ。おそらく他の国だったら、これらの仕事は最低給与をわずかに上回る金額しか受け取れないだろう。
しかし、日本の国民年金にあたる老齢・遺族年金や失業保険など義務となっている各種社会保険料、収入の2割を占める家賃や公共料金を差し引くと、手元にそれほど多くのお金は残らない。他の多くの国とは異なり、スイスでは所得税と健康保険料は給料から天引きされないことも覚えておかなければならない。
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これに加えて、収入の約8%を占める交通費、世界で最も高額な保育費、「高物価の島」と呼ばれるほど高い食費、ドリンク代、レジャー費が家計にのしかかる。給与はさらに妥当だと思えてくる。 国の統計によると、月収5000フラン未満の世帯は貯蓄に回せるお金がない。
例えば訪問介護士、事務職員、コンサルタントの家計はどうなっているのだろうか?実際に家計簿をつけてもらった。
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低賃金労働者にとって特につらいのは、賃金は上がらないのに生活費だけは上昇し続けることだ。約32万人の被雇用者―つまり労働者の約12%― は低賃金労働者だ。
「基礎医療保険料と家賃は上昇しているが、賃金は緩やかにしか上昇しない。 下位中産階級の生活は厳しくなるばかりだ」。ベルン大学のロバート・フルーダー教授はそう説明する。
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「低所得層の人々はスイスで大きなプレッシャーを感じている」(アンドレア・シュミット・フィッシャー氏/消費者団体バジェットアドバイススイス会長)
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