労働市場の裏側
スイスの雇用状況は非常に安定している。世界的な経済危機が発生しても、スイス経済に壊滅的な影響を与えることはほとんどない。
フルタイムの労働時間は週平均41.7時間だが、有給休暇は年間最低20日とほかのヨーロッパ諸国よりも少ない。祝日の数は州によって異なり、概して8日から9日。
スイスのUBS銀行が世界71都市を対象にした2015年の調査外部リンクによると、チューリヒとジュネーブは、前回(2012年)の調査から著しく物価が上がった。両州の手取り給与額と購買力は世界最高レベル。
連邦統計局(BFS/OFS)の調査外部リンクによると、給与水準には地域によって大きな差がある。この格差は、各地の経済活動の違いによる。バーゼル地方は製薬業が盛んなため所得水準が高い。またチューリヒとジュネーブの1人当たりの賃金は比較的高いと同時に、物価に対する賃金水準を示す購買力も高い。
失業率もまた地域によって異なる。フランス語圏とイタリア語圏の失業率はドイツ語圏よりも高い。また男性よりも女性、そしてスイス人よりも外国人の失業率の方が高い。雇用と所得、失業率については連邦統計局のサイトを参照。
外国人労働者
スイスの労働者の3人に1人は外国人。スイス経済はどの業界も外国人労働者無しには成り立たない。
スイスとEUが締結した「人の移動の自由に関する協定」は、EU加盟国の労働者の流入をスイスにもたらした。しかし、スイス有権者による2014年2月の国民発議(イニシアチブ)で、EU加盟国からの労働者数に上限を再び設ける案が可決された。政府はこの投票結果を実行しなければならないが、それはEUとの協定に影響を与える可能性がある。 詳細はこちら。
さらに2016年6月、イギリスが国民投票でEU離脱を可決した。 離脱交渉中の少なくとも2年間はEU加盟国にとどまる。 その後、英国のEU離脱がスイスに居住・就労を希望するイギリス市民にどのように影響するかは明らかでない。
EU加盟国でスイスに最多数の労働者を送り出している国はイタリアだ。外国人労働者の大半は短期滞在者。反対に、イタリアから永住者として移ってくる人々は30年以上滞在することが多い。
スイスで就労するドイツ人も多く、スイスのドイツ人人口は大きい。その多くは高資格を持った管理職、教師、医療関係者である。
不法就労
許可を取得せずに就労することは違法で処罰の対象になる。また、許可を取得していても、地元当局での登録が済んでいない場合、法律的には許可を申請した職場での就労はできない。就労はそうした必要手続きを終えてから。(詳しくは労働許可証の項目を参照)。
不法労働は罰金またはそれ以上の処罰を科せられる。不法労働者の雇用主も処罰される。また法律的には、雇用主は不法労働者の労働に対して賃金を支払う必要は無い。
越境通勤者
越境通勤者は、スイスで働くEU加盟国の就労者の中では特別なカテゴリーに属する。元は彼らの居住地と勤務地は特定の国境地帯に限られていたが、それらの規制は無くなった。
イタリアとドイツの越境通勤者もいるが、半分以上はフランスに居住。スイスの北西部やレマン湖周辺、ティチーノ州で働く越境通勤者が多い。
スイスの外国人就労者についての詳細は、移民・人口調査のスイス・フォーラム外部リンクのウェブサイトを参照。
一般的な注意事項
一般的にスイスでは解雇は最後の手段。雇用主は解雇に対して非常に消極的で、景気が回復するまで労働時間の短縮で乗り切ろうとする傾向が強い。
自由契約に基づくフリーランスにはさまざまな職種があるが、スイスでしばらくの期間働いた外国人がフリーランスになる場合、まず州政府からフリーランスの労働者である証明書を取得しなければならないため、雇用の前にその提示を求められることもある。労働法はこの点について非常に厳しいため、それが無い場合はフリーランスとしてではなく、実質的に正社員の雇用と同様の扱いになる。
雇用と所得、失業についての詳細は、連邦経済省経済管轄局(SECO)のウェブサイト外部リンク(英/独/仏/伊語)を参照。
※このコンテンツは2015年8月時点のものです。今後は更新されません。
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