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「またトラ」、少数与党、JTI…スイスのメディアが報じた日本のニュース

ジュネーブのJTI本社ビル
日本たばこ産業(JT)の国際部門子会社JTIは、スイスのジュネーブに本社を置く KEYSTONE/Martial Trezzini

スイスの主要報道機関が先週(11月11日〜17日)伝えた日本関連のニュースから、①「またトラ」に慄く日本②少数与党を選択した日本③JTIらに「戦争スポンサー」批判、の3件を要約して紹介します。

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「またトラ」におののく日本

今月5日の米大統領選で孤立・保護主義を掲げるドナルド・トランプ氏が返り咲きを果たし、各国が対応を急いでいます。フランス語圏の地域紙トリビューン・ド・ジュネーブや 4 heuresに、トランプ氏復帰は「日本を弱体化させる危険がある」と警鐘を鳴らす寄稿が掲載されました。筆者はベルギー公共放送(RTBF)の東京特派員、ベルナール・ドラットル氏です。

記事はアンケート調査で日本人の6割がトランプ氏の勝利を恐れていると紹介。ある年金生活者は取材に「北朝鮮と協定を結んだり、台湾が中国に攻撃されても支援しない可能性がある。私たちにとって最も大切な平和を失う危険がある」と語りました。政府関係者も「最悪のタイミングで米国がこの地域から手を引いたり、日本に脅威を与える国々と妥協したりする可能性がある」とみています。

また自動車業界で働く40代男性は「同僚も私も、11月6日からあまりよく眠れていない」とこぼしました。米国が関税障壁を強化し、輸出企業に打撃を与える可能性があるからです。記事は国際通貨基金(IMF)が2024年の日本の成長率を0.3%と世界平均や米中を大きく下回る水準に想定していることを引き合いに、「日本経済はトランプ大統領の保護主義的な政策の打撃を受ける余裕がない」と指摘しました。(出典:トリビューン・ド・ジュネーブ外部リンク/フランス語)

少数与党を選択した日本

衆参両議院は11日の本会議で首相指名選挙を行い、自民党の石破茂総裁を第103代首相に指名しました。スイスの各言語圏メディアがこれを報じる外部リンクなか、ドイツ語圏の経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは、東京在住ジャーナリストのウルス・シェットリ氏の解説記事を掲載しました。

石破氏は30年ぶりの決選投票を制しましたが、自民・公明党の連立与党に加わる政党はなく、今後の立法過程は法案ごとに過半数を確保しなければなりません。シェットリ氏は「最初の大きな闘争は次の予算審議で起こるだろう」とみています。

また来年7月の参院選は結果次第で「政権崩壊の合図となる可能性がある」。これは「内外両面で今後日本を待ち受ける大きな課題を踏まえると、好ましい出発点とはいえない」と指摘しました。

最大の課題は、第2次トランプ政権が待ち受ける米国との関係です。日本は岸田文雄前政権下で防衛予算を過去最高水準まで増額しましたが、米国には大きく後れをとっています。「韓国と同様、日本も駐留米軍に対する支出拡大を米国政府に要求されることに備える必要がある」。対米貿易でも大きな黒字を有するため、「新たに導入された関税の圧力にさらされることが予想される」といいます。

日本政府がさらに懸念しているのは、「トランプ大統領が同盟国(日本)に相談せずに中国政府と交渉し、それによって極東の不確実性や紛争を引き起こすこと」だと指摘します。

内政では人口減をはじめ構造問題を抱えています。シェットリ氏は改革には「大きな勇気とビジョン」が必要とされるこの局面での不安定な少数与党の実行力に疑問を投げかけています。

「並外れた政治的才能を持つ安倍晋三ですら最終的に全てを押し通せなかったこの場所で、石破茂氏はしばしば矛盾する特別な利益をすべて調和させるのに必要な不屈の精神を備えているだろうか?」(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語)

JTIらに「戦争スポンサー」批判

スイスには世界3大たばこ企業の本社があります。日本たばこ(JT)の海外事業を担うJTIも、ジュネーブに本社を、ルツェルン州ダグマーゼレンに工場を置きます。同社と、ローザンヌに本社を置く米フィリップモリスインターナショナル(PMI)がロシアのウクライナ侵攻後もロシア事業を継続し、納税を通じて戦争に加担していると批判する記事がドイツ語圏大手紙NZZに掲載されました。

記事によると、JTIはウクライナ政府に批判されているだけでなく、昨年8月にウクライナ汚職防止機関がまとめた国際的「戦争スポンサー外部リンク」のリストに追加されました。ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)は2023年9月にロシア子会社を現地企業に売却。英インペリアル・ブランズも侵攻開始の2カ月後にロシアから撤退しました。

JTIのロシア広報担当者は今年3月の業界誌「タバコ・レポーター外部リンク」で、馴染みの製品をロシア人顧客から取り上げたくないと語っています。スイスの食品・製薬企業も、自社製品は戦争に使用されないとロシア事業の継続を正当化しています。

JTIはNZZの取材に、2022年3月から新規投資とマーケティング活動は中止されていると述べました。

しかし記事は「ロシアで事業を続ける全ての企業が、直接・間接(従業員の所得税などを通じて)にロシアの国家財政を支援しているという問題はなお残る」と指摘。特にたばこはニコチン依存者との関係で価格決定力が強く、納税額も大きくなっています。キエフ経済大学院によると、JTIのロシアでの納税額は1億8200万ドルに上ります。

競合社のロシア撤退によりPMIやJTIは売り上げを伸ばしているもようです。また北大西洋条約機構(NATO)の兵士が配備されベラルーシ産偽造品が出回りにくくなったことも、たばこ業界全体の追い風になっています。

一方で、西側諸国の経済制裁でたばこ製造の材料や機械が不足し、ロシア事業は困難になっているといいます。しかし外国企業の撤退を阻みたいロシア政府が資産売却のハードルを引き上げ続けているため、JTIら残留組がこれから撤退するのは難しくなっています。記事は「PMIもJTIも、ロシア市場で行き詰まりに陥る危険性が高まっている」と結びました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

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先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画」(記事/日本語)でした。他に「ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定」(記事/日本語)、「フランスの越境労働者、スイスの失業手当削減に反発」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は11月25日(月)に掲載予定です。

校閲:大野瑠衣子

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